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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402

須藤眞一郎行政書士事務所気付

熊本県DV対策基本計画(第三次)の改定に対する意見と提案

※以下の文章は、2013年12月22日発行のコムスタカ第84号に掲載したものに、一部追加して加筆修正したものです。

  コムスタカー外国人と共に生きる会として、「DV被害者が、原則として県外など他の地域に逃げなくても、その地域で保護され、生活の自立ができ、加害者がその責任を負わされる」とい考え方にもとづいて、DV被害者からの相談や救援・生活自立支援を行ってきました。
  DV問題の解決には、被害者保護の施策の拡充とともに、DV加害者への抑止や働きかけや更生等の加害者対策が必要です。 長年にわたる外国籍のDV被害者の相談・保護など救援、生活の自立支援などの取り組みの経験から、熊本県DV対策基本計画(第三次)の改定案に対する意見と提案を以下行います。

団体名 コムスタカー外国人と共に生きる会
代表    中島  眞一郎

一. 外国人DV被害者への啓発や説明資料や申請書類の多言語化の推進のための施策について

  1.  2004年(平成16年)にコムスタカー外国人と共に生きる会が受託して作成した8か国語の対応の『DV防止啓発リーフレット』、及び一時保護所など関係機関で使用される『熊本県 外国籍被害者のためのDV対応マニュアル』が使用されています。 これ等は作成から9年が経過しており、また改定されても部分改定にとどまっており、連絡先が変更になっている団体があったり、DV防止法が改定されており、外国人登録制度が廃止されたり、母子自立支援施設の大江荘がなくなっていたり、現状に対応するためには、新しく作成するか、全面改定することを提案します。

    ※ 「DV防止啓発リーフレット」は、2015年に「許さない、DV」という、やさしい日本語を含めて10か国語の多言語版(制作 熊本県)で改定されました。
       
  2.  DV被害者が相談・保護・自立に至る過程で、必要とされる司法や行政関係の説明書や申請書(たとえば、裁判所への保護命令説明書や申請用紙、生活保護の説明書や申請書、その他行政関係の説明書や申請書等の文書の多言語化(ルビ入り日本語を含む)を可能な限り進めてください。
       
  3.  外国人からのDV相談にも多言語で対応できる相談員、通訳、翻訳できる人材の確保と充実を提案します。具体的には、熊本県、総合福祉相談所のホームページなどDV対策に関して多言語化し、外国人DV被害者の相談に対応できる言語や時間帯を公表して広報することを提案します。
       

二. DV被害者の保護・自立支援の施策について

  1. ケースごとのコーディネーター制度の創設と任命
     ケースごとにDV被害者の意思を尊重しながら、関係機関係者でチームを作り、DV被害者の保護から生活自立までの全過程で、DV被害者と意思疎通を図りながら、行政やその他関係機関の連絡調整できるコーデイネーターを任命する。 コーデイネーターはDV被害者との信頼関係をきづき、DV被害者の保護・自立へ向けた全過程(22頁、 DV被害者支援フロー図にあるような)で、DV被害者の関係機関への引継ぎに伴う断絶やたらいまわしを防ぎ、DV被害者が自立できるように総合的な調整に関与できる権限と責任を負う。
      
  2. 住宅の施策について
     DV被害者の自立のためには、個々のケースのニーズに対応できるため、提供される自立のための住宅の施策は、多様で広範な施策が望ましい。
     熊本県は、2003年度からコムスタカー外国人と共に生きる会の提案によりステップハウスを複数個設置、熊本県営住宅に2006年度からDV被害者の目的外使用住宅(当初一戸)、その後、コムスタカー外国人と共に生きる会からの複数化の要望により 2012年度現在4戸設置され運営されている。 また、熊本市も2011年度から市営住宅のDV被害者のための目的外使用を導入(2013年度現在 最大9戸)し、運用している。

    @熊本県営住宅のDV被害者のための目的外使用の住宅の分散化の実現
     熊本県営住宅のDV被害者のための目的外使用の住宅の複数化は実現していますが、同じ県営住宅内しかないため、その団地内で居住していたDV被害者が利用する場合、DV加害者と近接して暮らさざるを得なくなります。 また、就労先の確保や通勤等の利便性を考慮しても、他の県営住宅の施設内に設けるなどできるだけ広範囲に分散化して設置し、複数化と共に分散化して設置することを提案します。
     DV被害者の経済的負担を減らし自立しやすくするためにも、熊本市の施策と同様に入居時の敷金などの負担だけでなく、退去時の畳替えやふすま替えの負担の原則公費負担とするように改善する。

    A短期滞在施設の設置と運営の提案
     一時保護所の入所の要件に当てはまらない、あるいは就労や子どもの就学の関係で一時保護所を利用できないDV被害者のために、一日から一週間以内の滞在を無料でできる施設を設置して公費で運営するか、民間施設に委託して公費負担できるようにする。
      

三. 加害者対策の施策への提案

 

 現在までの加害者対策は、警察による指導・警告、加害者へ向けたカウンセリング、民間団体による加害者更生へ向けたプログラムの研究や実施などが行われているが、いずれも利用・活用されている数が少なく、きわめて不十分です。

DV被害者の公的機関の職員による代理人制度の創設の提案
 熊本県女性相談センターでの2008年から2012年まで最近5年間でDVの電話相談は平均1150件程度あり、深刻なDV被害者と思える一時保護者(本人)のうちDV被害のある保護者は平均約60人です。 その反対側に同じ数のDV加害者がいることが推定されます。 これらの推定DV加害者への啓発・指導、警告、カウンセリングが最も必要で、初期対応として最も効果的と思えます。
 DV被害の相談者や一時保護者の同意と委任を得て、公的機関の職員が相談者や一時保護者の代理人として、DV被害者の側に立ってDV加害者となる相手方に接触し、DVに対する啓発・指導・警告を行ったり、DV加害者の言い分や主張を傾聴する、DV被害者の代わりに窓口となってDV加害者と対応する役割を担う人(DV被害者代理人)を設置する。
 DV加害者は、「自分の言い分を聞いてもらえない、どこも相談するところがないか、相手にされない」との不満がある場合が多く、対応してくれる人があることが、被害者の支援者や親族・友人への被害の防止や、DV加害者の気持ちや状況を把握できることで、DV被害者の保護と自立の方針がより的確なものにできる効果が期待できます。

四. 現行計画にない施策で、新たに取り組むべき施策について

 2010年7月〜8月に熊本県内で保護された外国籍の人身売買被害者のうちの一人がセクシュアルマイノリテイ(LGBT)であったため、同じ人身売買被害者でありながら公的機関からの保護や支援が一切受けられないという問題が明らかになりました。2012年度から熊本県の民間シェルター補助制度の要項が改正され、男性の人身取引被害者もその対象に含まれるようになりました。 しかし、補助の内容は、2週間を限度として、一日1500円という内容は極めて不十分です。

 
  1. セクシャルマイノリテイ(LGBT)DV被害者、そして、男性を含む人身取引の被害者のための施策の行政内部での検討の研究と検討
      
  2. 男性を含む人身取引の被害者の男性やセクシュアルマイノリテイ(LGBT)の人身売買被害者を保護できる施設の設置、あるいは公費による民間施設への委託の実現

熊本県は DV被害者が男性や障がい者の場合にも対応できるように熊本県内の民間施設と一時保護委託契約を締結しています。セクシャルマイノリテイ(LGBT)のDV被害者、そして、男性を含む人身取引の被害者の男性やセクシュアルマイノリテイ(LGBT)の人身売買被害者を保護できる施設の設置、あるいは公費による民間施設への委託の実現を提案します。

 

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