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コムスタカ―外国人と共に生きる会 Kumustaka-Association for Living Togehte with Migrants

〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目2-14-402

須藤眞一郎行政書士事務所気付

平成24年度 熊本県DV対策関係機関会議報告

2013年1月15日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

「平成24年度熊本県DV対策関係機関会議(代表者会議)」が、2012年5月28日(月曜日)午前10時から12時まで、熊本県庁行政棟新館 201会議室で、熊本県DV対策関係機関の代表者ら55人が出席して開かれました。コムスタカ―外国人と共に生きる会も、民間サポート機関5団体のうちの一つとして出席しました。

議事は、1.開会挨拶、2.行政機関(子どもの家庭福祉課・女性相談センター・男女共同参画センター・精神保健福祉センター)の活動状況や相談状況報告と今年度の予定、3.民間サポート機関におけるDV被害者支援の現状報告、4.意見交換会・質疑報告の次第で進行しました。議事の1から3の報告で1時間20分程度費やし、質疑時間が40分程度とってありますが、例年事前質問や要望事項を提出するのは、民間サポート団体で、そのなかでも、コムスタカの事前質問や要望項目や、質疑討論の時間もコムスタカが7−8割占めていました。今年度の会議も同様な展開となりましたが、昨年度以上に、行政機関や関係機関から前向きな取り組みや改善の回答があり、有意義な会議となりました。

コムスタカより事前に要望した四項目
質問1
2011年度から実施されるようになったDV被害者の熊本県営住宅の目的外使用できる戸数が従来の一戸から複数化されるようになったが、その入居運用状況について教えてほしい。また、県営住宅の場合、期間1年間と利用を制約されているDV被害者の入居者にも、他の入居者同様の退去時の費用負担(畳・襖の張り替え)が課されているが、同じく2011年度よりDV被害者への目的外使用できる戸数が複数化された熊本市営住宅の利用規約では、原則徴収しないとなっていることと比べて、その条件の撤廃の検討結果について明らかにしてほしい。

回答
2011年度 目的外使用としてDV被害者に提供できる戸数は、熊本県営住宅が4戸、熊本市営住宅が3戸の計7戸。入居状況は、県営住宅が2戸、熊本市営住宅が3戸(2012年4月からの1戸を含む)。熊本県営住宅の入居時の敷金不要だけでなく、退去時の費用負担をDV被害者のみ不要とすることは他の入居者との均衡を失し、また熊本市営住宅とも入居や募集状況が異なり、同様にすることはできない。

再反論:DV被害者の県営住宅の目的外使用は、他の入居者が長期入居を前提とされていることと比べて期間は一年間と利用が限定されており、また、熊本市営住宅との違いの説明も納得できるものではないので、再検討してほしい。


質問2
直接身体的暴力のない被害者(精神・ことば、経済的遺棄)を一時保護する場合の一時保護証明書の記載の根拠として、売春防止法の規定ではなく、DV防止法の規定を根拠とする証明書を発行してほしい(外国籍の被害者の場合、在留資格の変更や更新申請の際に、「売春防止法」による根拠規定では、「売春行為」に関与していたのではと疑われた事例があったため)

回答 
DV防止法に該当するケースの一時保護 に関してはDV防止法を根拠として一時保護したことを記載するようにする。また、DV防止法に該当しないケースの一時保護に関しては、「DV防止法の施行に対応した婦人保護事業の実施についての厚生労働省雇用均等・児童保護局の通知」を根拠規定として記載するように改める。


質問3
2010年8月に熊本県内で実際に人身取引被害者として認定された外国籍男性が、男性を理由に公的施設での一時保護をうけられず、公費の支援もなく民間シェルターや民間の支援団体に委ねられた問題が生じたが、男性の人身取引被害者を保護する施設と財政面での公的援助の課題の検討状況を教えてほしい。

回答 
2012年度より、熊本県として民間シェルターに委託して男性の人身取引の被害者も公費で保護できるように取り組みを行うことにした。(なお、現在「要綱」の見直し作業中であり、それができ次第翻って2012年4月からの実施となる)


質問4
DV保護命令申立書に加害者の暴力を証明するため医師の診断書を添付しようとする場合、大きな病院の場合、申請から交付まで2〜3週間を要する場合があるが、DV被害者の保護命令に必要な場合には速やかに交付してほしい。

回答
熊本県公的病院長会として、DV被害者に限らず児童虐待など緊急性を要する場合には速やかに診断書を交付するように文書で通知する。

コメント: これまで政府も自治体も、2004年に策定された人身取引行動計画において、その見直しがされた2009年後も男性の人身取引被害者の保護する施設や公費による支援施策を、検討課題としか位置づけておらず、その具体化を怠り続けてきている。今回の熊本県の回答は、おそらく男性の人身取引被害者を対象とした全国初の公費による支援の施策の実施となり、その施策は高く評価されてよいと思える。

質問5(これは、2011年度の質問と要望事項でしたが)
弁護士への研修について、法テラスの無料法律相談を担当する弁護士に、DV被害者に対応するための研修を、実施してほしい。(DV被害者の保護や自立への配慮よりも仕事につなげたがる対応が目立つ)

回答 
平成23年の本会議での本件についての報告を受け、弁護士会ではDV事件処理についての研修会が実施された。(2012年度の会議に出席されていた熊本県弁護士会両性平等委員会の弁護士より、会議終了後、「その研修には熊本県弁護士会館の会議室がほぼいっぱいとなるぐらいの参加があったこと、研修自体は継続していきたい」という説明がありました。)


追記 コメント
本会議終了後、出席していた他の民間サポート機関の方から、「中島さん、(行政に対して)あきらめずに言い続けると、実現していくものなんですね」と言われたのが印象的でした。

行政関係機関の会議は、事務局の設定した報告中心の議事を、淡々と消化して、質問もなく終わるかことが多いのが現実でした。たまに、民間団体が何を言っても、設定された枠組みや既存の決定事項が、見直されたり、検討されることはなく、質問しても、行政側から先例踏襲か、できない理由を延々と述べる繰り返しで。

参加していた者は、何も変わらないという無力感に襲われることも多々ありました。熊本県DV対策関係機関会議も当初は同様な状態であったと聞いていますが、四年前からコムスタカ代表として私が参加するようになってから、具体的な移住女性の救援事例での体験を通して、行政機関への質問や要望を自是に提出し、質疑時間にも積極的に趣旨説明や反論を行うようになってから、会議の在り方も変わってきたと思います。

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