コムスタカ―外国人と共に生きる会

「外国人犯罪」問題


東京都「不法滞在外国人」犯罪データから見る実像
―「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」批判 のための基礎資料として-----

中島真一郎
2003年11月14日

はじめに

今年7月28日の「不法入国者をたたきだす」という石原発言を具体化する「不法滞在者狩り」ともいえる「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」(以下、共同宣言)が法務省・警察庁・東京入国管理局・警視庁により2003年10月17日に公表されました。この「共同宣言」では、「不法滞在者は,その多くが不法就労活動に従事しているほか,安易に金を得るため犯罪に手を染める者も少なくなく,さらには,暴力団等と結託し,あるいは犯罪グループを形成するなどとして,凶悪犯罪に関与する者も増加しているなど,一部不法滞在者の存在が,多発する外国人組織犯罪の温床となっているとの指摘があり,我が国の治安対策上,これら不法滞在者問題の解決が喫緊の課題となっている。」(「共同宣言」より)としています。そして、推定で東京に12万人以上いる在留資格のない外国人を今後5年間で半減させる(6万人以上を退去強制させる)ことを目標にしているとされています。しかしながら、本当に在留資格のない外国人(警察や入管から「不法滞在者」と呼ばれる外国人)による犯罪は、東京都内で「急増」、「凶悪化」し、治安悪化の要因となっているのでしょうか。

東京都(警視庁管内)の最近7年間(1996-2002年)認知件数は、刑法犯で30%増加し、 凶悪犯で65%増加(特に強盗犯は106%増加と倍増)していますので、犯罪発生数が増加しているといえます。しかし、結論的にいえば、最近7年間(1993−1997年)の東京都(警視庁)「来日外国人」による犯罪統計データによると、「来日外国人」刑法犯検挙人員は、最近10年間で1993年3778人から2002年2027人へ4割以上も大幅に減少しており、その構成比も東京都全体の刑法犯検挙人員の平均4%台です。また、最近7年間(1993−1997年)の東京都(警視庁)「不法滞在者」の犯罪統計データによると「不法滞在者」刑法犯検挙人員は平均484人で、その構成比も東京都全体の1%未満にすぎません。「不法滞在者」凶悪犯検挙人員は平均59人、その構成比も東京都全体の平均6%台にすぎず、近年は減少してきています。以上から、東京都「不法滞在者」による犯罪が、犯罪発生数が増加する東京都の「治安悪化」や「犯罪の温床」となっているわけではありません。

以下、東京都(警視庁管内)の最近7年間(1996-2002年)の「不法滞在者」刑法犯・凶悪犯の検挙人員の推移を検証して、「共同宣言」の批判のための基礎資料を提供しておきます。

注1) 在留外国人は、警察庁の分類では、「来日外国人」「定着居住者等」(あるいは「その他の外国人」とも呼ばれます)に大別されます。警察庁の外国人犯罪の統計は、「来日外国人」による犯罪データしか公表していません。「定着居住者等」とは、@「定着居住外国人」(「特別永住者」と「永住者」と「永住者の配偶者等」をあわせた外国人)とA駐留米軍関係者とB在留資格不明者のうち明らかに日本人でない者をいいます。「来日外国人」とは、@入管難民認定法の27の在留資格のうち「永住者」と「永住者の配偶者」を除いた25の在留資格者とA「不法滞在者」(「不法残留者」「不法入国者」「不法上陸者」で構成される)をあわせた外国人のことをいいます。なお、「検挙者」は、あくまで「被疑者」であることを付記しておきます。

注2)「不法滞在者」とは、日本の入管行政は、原則として就労可能な在留資格を専門的・技術的な職種に限定し、それ以外の就労を認めていません。「不法滞在者」とは、このような入管難民認定法(以下、入管法)の規定に違反し、主に日本で就労するために滞在している外国人のことをいいます。警察庁がいうところの入管法に違反する「不法滞在者」には、「不法残留者」(許可された在留期間をこえて滞在している場合など)、「不法入国」(旅券を持たず、あるいは偽造旅券で入国した場合などで、2002年では船舶利用は26%、航空機利用が74%となっています)、「不法上陸」(有効な旅券をもっていても、上陸許可を受けずに上陸した場合など)が含まれます。

注3) 1996年から2002年の最近7年間の統計データとしたのは、警視庁が「不法滞在者」の内訳(「不法残留者」「不法入国者」「不法上陸者」)を区分して統計を取り始めたのが1996年からであるためです。

注4)「外国人犯罪」統計データの出典は、「犯罪白書」「警察白書」「来日外国人犯罪の現状」(警察庁来日外国人犯罪等対策室)や警察庁や警視庁のホームページで公表されている犯罪統計データと、及び「不法滞在者」の内訳別の犯罪統計データなど公表されていないデータなどは、国会議員を通じた警察庁への質問書とその回答、内閣への質問主意書と内閣総理大臣の答弁書などからです。

注5)東京都内で発生する犯罪のうち「外国人」犯罪がいくらあるかは、東京都刑法犯認知件数に「外国人」によるものがいくらあるかが不明なため、警察庁や警視庁は、警察の検挙後にあきらかになる刑法犯検挙件数と検挙人員によって、その「増加・凶悪化・組織化」などを判断しています。検挙件数や検挙人員も警察の捜査方針や捜査能力などにより左右される不確定な指標で、特に検挙件数は余罪追及の程度によって大きく左右されます。近年の検挙件数の大幅減の理由を、「余罪の追及による検挙件数重視から検挙人員重視へと捜査方針をかえたため」と警察庁は説明していますので、検挙人員を指標として、その経年的変化の中で推定していくことが、「外国人」犯罪の実像を示す方法となります。なお「殺人」については、「検挙率」(検挙件数÷認知件数)が95%程度ありますので、検挙件数で比較しても、日本で発生している「殺人」事件で「外国人」によるものが占める構成比をほぼ正確に表すことになります。

1.東京都の「治安悪化」とは、どの程度か

犯罪の発生件数を示すものとして、刑法犯(交通業過を除く)認知件数が使われます。表1(1996−2002年最近7年間の東京都刑法犯と凶悪犯の認知件数の推移)から、1996年と比べて、2002年は刑法犯認知件数で30%増加、凶悪犯認知件数で65%増加しています。東京都凶悪犯認知件数のうち殺人犯認知件数は8%増加と微増ですが、強盗犯認知件数が106%増加と2倍以上に増加しています。1996年と2002年の全国刑法犯と凶悪犯の認知件数を比較すると、1996年と比べて、2002年は刑法犯認知件数で57%増加、凶悪犯認知件数で18%増加しています。東京都凶悪犯認知件数のうち殺人犯認知件数は9%増加、強盗犯認知件数が39%増加となっています。従って、全国と比べて東京都の犯罪発生数(認知件数)の増加比率は、刑法犯では57%増対30%増と全国の半分程度となっていますが、凶悪犯では18%増対65%増と増加比率大きいことが特色です。特に、殺人は9%増対8%増と全国とほぼかわりませんが、強盗の増加率が39%増対106%増と大きくなっています。全国と比べて東京都の犯罪発生数の増加は、1996年と2002年の認知件数で比較すると、刑法犯としては全国の半分程度の増加にすぎませんが、凶悪犯、その大半を占める強盗犯の認知件数の増加率が全国の2.7倍あることが特色です。

表1 1996−2002年最近7年間の東京都刑法犯と凶悪犯の認知件数の推移

 1996199719981999200020012002
a東京都刑法犯認知件数232103(100)235767251180268006291371292579301913(130.) 
b東京都凶悪犯認知件数999(100)106613051465161016181647(165) 
c東京都殺人犯認知件数117(100)131132157151137125(107) 
d東京都強盗犯認知件数501(100)5556869119849501034(206) 

注)2002年の刑法犯認知件数の( )内は、1996年の認知件数を100とした場合の2002年の認知件数の比率

注)刑法犯は、「凶悪犯」「粗暴犯」「窃盗犯」「知能犯」「風俗犯」「その他の刑法犯」の6種類の包括罪種で構成されている

注) 凶悪犯は、「殺人」「強盗」「強姦」「放火」の4種類の罪種で構成されている

2.東京都「来日外国人」刑法犯の検挙人員は、減少傾向にある

以下の表2であきらかなように、「来日外国人」最近10年間(1993年―2002年)の東京都の「来日外国人」刑法犯検挙人員最大値は、1993年の3778人で、最小値は1998年の1462人となっており、10年前の1993年のピーク時の39%まで減少し、2000年から2002年の最近3年間は2000人前後となっていますが、1993年のピーク時と比べると2002年では46%減少しています。このように最近10年間の「来日外国人」刑法犯検挙人員は、大幅に減少しています。なお、東京都刑法犯検挙人員に占める「来日外国人」の構成比(%)の最大値は1993年の5.8%、最小値は1998年の3.1%となっており、2000−2002年の最近3年間の構成比が4.2-4.3%程度とやや高くなっていますが、10年前のピークの1993年の5.8%と比べると7割程度に減少しています。東京都の刑法犯検挙人員の95%以上が「来日外国人」以外が占めており、最近10年間では「来日外国人」刑法犯検挙人員は大幅に減少してきています。

表2  1993−2002年最近10年間の東京都「来日外国人」および「東京都全体」の刑法犯検挙人員の推移

1993199419951996199719981999200020012002
a東京都「来日外国人」刑法犯検挙人員3778332827302261189714621734201319702027 
b「東京都全体」刑法犯検挙人員64705683416091455829492464763047957465624702647828 
c構成比(a÷b)(%)5.84.94.54.03.93.13.64.34.24.2 

3.東京都(警視庁)での「不法滞在者」の刑法犯検挙人員はどの程度か

表3 1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」刑法犯検挙人員と「東京都全体」刑法犯検挙人員の推移であきらかのように、東京都「不法滞在者」刑法犯検挙人員は最近7年間では平均484人でおおむね横ばいで増加傾向にありません。「東京都全体」刑法犯検人員に占める構成比も最近7年間の平均が0.99%で1%未満に過ぎません。石原都知事が目の敵にし、ヒステリックに撲滅を叫んでいる東京都「不法入国者」刑法犯検挙人員は、最近7年間の平均が165人で、1997年から2000年までは増加傾向にありましたが、最近2年間は減少しています。「東京都全体」刑法犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が0.34%で、最近2年間はその構成比は減少しています。

表3  1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」刑法犯検挙人員と 「東京都全体」の刑法犯検挙人員の推移

 1996199719981999200020012002
a東京都「不法滞在者」刑法犯検挙人員492(62)480(105)405(125)504(225)588(260)447(191)469(186) 
b「東京都全体」刑法犯検挙人員55829492464763047957465624702647828 
c構成比(a÷b)(%)()内の構成比は(「不法入国者」刑法犯検挙人員÷b)(%)0.88(0.11)0.97(0.21)0.85(0.26)1.05(0.47)1.26(0.56)0.95(0.41)0.98(0.39) 

a ( )内は東京都「不法入国者」刑法犯検挙人員
c( )内の構成比は(「不法入国者」刑法犯検挙人員÷b)(%)

4.東京都(警視庁)での「不法滞在者」の凶悪犯罪検挙人員はどの程度か

表4 1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」凶悪犯検挙人員と「東京都 全体」の凶悪犯検挙人員の推移であきらかのように、東京都「不法滞在者」凶悪犯検挙人員は、最近7年間では平均59人でおおむね横ばいで、1999年の79人をピークに減少してきています。「東京都全体」の凶悪犯検人員に占める構成比も最近7年間の平均が6.5%で、1999年の8.1%を最大に最近3年間は減少傾向にあります。東京都「不法入国者」凶悪犯検挙人員は、最近7年間の平均が26人で1996年から2000年まで増加傾向にありましたが、最近2年間は減少し、「東京都全体」凶悪犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が2.9%で、1996年ら2000年までは増加傾向にありましたが、最近2年間はその構成比は縮小し、2002年には2000年の4.4%の3分の1程度にむしろ減少しています。

表4 1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」凶悪犯検挙人員および東京都全体の凶悪犯検挙人員の推移

 1996199719981999200020012002
a東京都「不法滞在者」凶悪犯検挙人員52(16)48(19)60(26)79(38)67(44)51(25)53(15) 
b東京都全体の凶悪犯検挙人員7528268539781000938967 
c構成比(a÷b)(%)6.9(2.1)5.8(2.3)7.0(3.0)8.1(3.9)6.7(4.4)5.4(2.7)5.5(1.6 

a.()は「不法入国者」刑法犯検挙人員
c.( )内は(「不法入国者」÷b)(%)

5.東京都(警視庁)での「不法滞在者」の殺人犯検挙人員はどの程度か

表5 1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」殺人犯検挙人員と「東京都全体」の殺人犯検挙人員の推移であきらかのように、東京都「不法滞在者」殺人犯検挙人員は、最近7年間では平均12人で、1999以降減少傾向にあります。1996―1999年の19人をピークに減少し、2002年は3人と8割以上減少しています。「東京都全体」の殺人犯検人員に占める構成比も最近7年間の平均が9.1%、で、1996年の15.8%を最大に近年では減少傾向にあり、2002年は2.2%へと9割弱減少しています。

東京都「不法入国者」殺人犯検挙人員は、最近7年間の平均が5人で1996年から1998 年まで増加傾向にありましたが、1999年より減少し、2002年はわずか一人となっています。「東京都全体」凶悪犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が3.8%で、1996年から1998年までは増加傾向にありましたが、1999年以降減少し、2000年0.7%と1998年9.%の10分の1以下に減少しています。

表5 1993−2002年最近10年間の東京都「不法滞在者」殺人犯検挙人員および東京都全体の殺人犯検挙人員の推移

 1996199719981999200020012002
a東京都「不法滞在者」殺人犯検挙人員19(5)19(9)19(11)12(5)5(2)7(2)3(1) 
b東京都全体の殺人犯検挙人員120136122151167130137 
c構成比((a÷b)(%)15.8(4.2)14.0(6.6).15.6(9.0)7.9(3.3)3.0(1.2)5.4(1.5)2.2(0.7) 

a.( )は「不法入国者」殺人犯検挙人員
c.( )内は不法入国者の殺人検挙人員

6.東京都(警視庁)での「不法滞在者」の殺人犯検挙件数はどの程度か

東京都殺人犯の検挙率(検挙件数÷認知件数)は、2002年99.2%とほほ100%近くあり、東京都の殺人犯検挙件数で比較するのが、東京都「凶悪犯」に占める「来日外国人」や「不法滞在者」や「不法入国者」の犯罪がどれぐらい占めているかの実像を最も正確に示します。以下の、表6は、2002年の東京都殺人犯認知件数と検挙件数(「東京都全体」「来日外国人」「不法滞在者」「不法入国者」殺人犯検挙件数の比較です。「来日外国人」や「不法滞在者」による犯罪の凶悪化が叫ばれていますが、東京都の昨年の124件の殺人犯検挙件数のうち、「不法入国者」1件、(0.8%)、「不法滞在者」3件(2.4%)、「来日外国人」6件(4.8%)でした。東京都で2002年に発生した殺人事件のうち95%以上が「来日外国人」以外によって行われています。

表6、2002年の東京都殺人犯認知件数と検挙件数(「東京都全体」「来日外国人」「不法滞在者」「不法入国者」)殺人犯検挙件数の比較

2002年殺人犯検挙件数構成比(%)
東京都全体124100 
うち来日外国人64.8 
うち不法滞在者2.4 
うち不法入国者0.8 

注)2002年の東京都殺人犯認知件数124件  検挙率99.2%

7. 東京都(警視庁)での「不法滞在者」の強盗犯検挙人員はどの程度か

表7 1996−2002年最近7年間の東京都「不法滞在者」強盗犯検挙人員と「東京都 全体」の強盗犯検人員の推移であきらかのように、東京都「不法滞在者」強盗犯検挙人 員は、最近7年間では年平均44人で、1999年に増加しますが、最近3年間は減少傾向 にあります。1999年の65人を最大に減少し、2002年は48人と4分の1以上減少して います。「東京都全体」の強盗犯検人員に占める構成比も最近7年間の平均が7.4%で、 1999年の9.9%を最大に近年では減少傾向にあり、2002年は7.3%へと4分1以上 減少しています。

東京都「不法入国者」強盗犯検挙人員は、最近7年間の年平均が21人で1997年から2000年まで増加傾向にありましたが、最近2年間は減少し、過去7年間で最大であった2000年42人と比べて14人と3分の1に減少しています。「東京都全体」強盗犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が3.4%で、1999年と2000年が増加していますが、最近2年間では減少しています。2000年6.7%と2002年年2.1%を比べると、3分の1以下へ減少しています。

表7  1993−2002年最近10年間の東京都「不法滞在者」強盗犯検挙人員 および東京都全体の強盗犯検挙人員の推移

  1996199719981999200020012002
a東京都「不法滞在者」強盗犯検挙人員32(11)25(10)36(13)65(33)58(42)42(23)48(14)
b東京都全体の強盗犯検挙人員459513555658626627656
c構成比((a÷b)(%)7.0(2.4)4.9(1.9)6.5(2.3)9.9(5.0)9.3(6.7)6.7(3.7)7.3(2.1)

a.( )は「不法入国者」強盗犯検挙人員
c.( )内は「不法入国者」の強盗検挙人員

8. 結び---東京都(警視庁)「不法滞在外国人」犯罪データから見る実像

(1) 全国と比べて東京都の犯罪発生数の増加は、1996年と2002年の認知件数で比較すると、刑法犯認知件数の増加率としては全国の半分程度(57%増対30%増)の増加にすぎませんが、凶悪犯、その大半を占める強盗犯の認知件数の増加率(39%対106%)が全国の2.7倍あることが特色です。

(2) 最近10年間(1993年―2002年)の東京都の「来日外国人」刑法犯検挙人員最大値は、1993年の3778人で、最小値は1998年の1462人となっており、10年前の1993年のピーク時の39%まで減少し、2000年から2002年の最近3年間は2000人前後となっていますが、1993年のピーク時と比べると2002年では46%減少しています。このように最近10年間の「来日外国人」刑法犯検挙人員は、大幅に減少しています

(3)東京都「不法滞在者」刑法犯検挙人員は最近7年間(1996年から2002年)では平均484人でおおむね横ばいで増加傾向にありません。「東京都全体」刑法犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が0.99%で1%未満に過ぎません。東京都「不法入国者」刑法犯検挙人員は、最近7年間の平均が165人で、1997年から2000年までは増加傾向にありましたが、最近2年間は減少しています。「東京都全体」刑法犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が0.34%で、最近2年間はその構成比は減少しています。

(4)東京都「不法滞在者」凶悪犯検挙人員は、最近7年間では平均59人でおおむね横ばいで、1999年の79人をピークに2002年53人と減少してきています。「東京都全体」の凶悪犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が6.5%で、1999年の8.1%を最大に最近3年間は減少傾向にあり、2002年5.5%となっています。また、東京都「不法入国者」凶悪犯検挙人員は、最近7年間の平均が26人で1996年から2000年まで増加傾向にありましたが、最近2年間は減少し2002年は15人、「東京都全体」凶悪犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が2.9%で、1996年ら2000年までは増加傾向にありましたが、最近2年間はその構成比は2000年の4.4%の3分の1程度の1.5%に減少しています

(5)東京都「不法滞在者」殺人犯検挙人員は、最近7年間では平均12人で、1999年以降減少傾向にあります。1996―1999年の19人をピークに減少し、2002年は3人と8割以上減少しています。「東京都全体」の殺人犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が9.1%、で、1996年の15.8%を最大に近年では減少傾向にあり、2002年は2.2%へ9割弱減少しています。

東京都「不法入国者」殺人犯検挙人員は、最近7年間の平均が5人で1996年から1998年まで増加傾向にありましたが、1999年より減少し、2002年はわずか一人となっています。「東京都全体」凶悪犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が3.8%で、1993年から1998年までは増加傾向にありましたが、1999年以降減少し、2000年0.7%と1998年9.%の10分の1以下に減少しています。

(6)「来日外国人」や「不法滞在者」による犯罪の凶悪化が叫ばれていますが、東京都の昨年の124件の殺人犯検挙件数のうち、「不法入国者」1件、(0.8%)、「不法滞在者」3件(2.4%)、「来日外国人」6件(4.8%)でした。東京都で2002年に発生した殺人事件のうち95%以上が「来日外国人」以外によって行われています。

(7)東京都「不法滞在者」強盗犯検挙人員は、最近7年間では年平均44人で、1999年に増加しますが、最近3年間は減少傾向にあり1999年の65人を最大に減少し、2002年は48人と4分の1以上減少しています。「東京都全体」の強盗犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が7.4%で、1999年の9.9%を最大に近年では減少傾向にあり、2002年は7.3%へと4分1以上減少しています。

東京都「不法入国者」強盗犯検挙人員は、最近7年間の年平均が21人で1997年から2000年まで増加傾向にありましたが、最近2年間は減少し、過去7年間で最大であった2000年42人と比べて2002年には14人と3分の1に減少しています。「東京都全体」強盗犯検挙人員に占める構成比も最近7年間の平均が3.4%で、1999年と2000年が増加していますが、最近2年間では減少しています。2000年6.7%と2002年2.1%を比べると、3分の2以下へ減少しています。

補論  5年間で「不法滞在者」半減を志向する共同宣言の検証 
―「退去強制者」に占める入管や警察による摘発数とその効果 

「我が国に不法に滞在する外国人は,過去10年間における50万人近い者に対する退去強制の実施等の懸命の取組にもかかわらず,いまだ約25万人(推計)に上っており,その約半数が首都東京にとどまっていると推測される。」(共同宣言より)「このような状況を改善するため,まずもって,首都東京の不法滞在者を今後5年間で半減させることを志向」し、東京都と警視庁と東京入国管理局と法務省入国管理局が共同して、「不法滞在者」の取り締まりを強化すると宣言しています。

しかしながら、以下に述べるように最近10年間で毎年平均5万人程度の退去強制者のうち入管や警察の摘発によるものは、その一部を構成しているにすぎませんので、5年間で半減することができるかは、実は他の要因に大きく左右されます。

退去強制手続きで違反審査を受ける者は、最近(1993年―2002年)10年間では、1993年の70404人を最大に2002年では41935人へと減少傾向にあります。このうち2002年に退去強制令書により送還された外国人は、33788人で、「不法残留者」が22960人の約7割を占め、ついで「不法入国者」7151人(その7割以上が航空機利用です)と約2割を占めています。  

入管は、1993年から2002年までの最近10年間で、毎年平均5万人以上の計50万人以上の外国人を退去強制させてきましたが、毎年平均4−5万人の新規の「不法滞在者」が発生してきたため、この10年間で総計約10万人(年平均1万人程度)の減少しかありませんでした。しかも、その減少の主な要因は、@入管や警察の摘発よりも、日本の不況による雇用情勢の悪化によるA自主出頭して帰国する者の増加と、B新規の「不法滞在者」の発生数の減少、およびC法務大臣の在留特別許可により合法化された外国人の増加(2002年6995人)によるものです。

5年前の1993−1998年のデータでは、入管の警備官が、入管法違反者を摘発するのは警察と合同の場合を含めても年間6千人から8千人程度で、道路交通法違反や刑法犯として警察や裁判所や海上保安庁などの他の機関から引渡しが8千人から1万人程度、残りの3万人から5万人は帰国したいと自主出頭してくる外国人で占められていました。つまり、入管の警備官の退去強制業務の3分の2程度は、自主出頭してくる外国人を退去強制させる手続きで占められていました。入管や警察の摘発は1−2割、他の機関からの引渡しを含めても退去強制者の3−4割しか占めておらず、残りの6−7割は自主出頭者で占められていました。

従って、日本に在留する「不法滞在者」の増減には、入管や警察の摘発や取り締まりよりも、新規の発生数、自主出頭者の増減、あるいは「在留特別許可」により合法化された数などの要因が大きな影響を持っています。

また、その半減の本来の目的が東京都での「不法滞在者」による犯罪を減少させることが目的であるならば、比較的摘発しやすいとおもえる、日本社会に定着し入管法違反以外に他の犯罪行為をしておらず平穏に暮らしている多くの「不法滞在者」を主に摘発することになり、かえって地下社会へ追い込み、「犯罪者」(一般刑法犯)へ転落させていくことになりかねません。日本人の一部が犯罪者となっているのと同様、「不法滞在者」による犯罪は、もともとその一部が行っているに過ぎず、その要因は国籍や在留資格の有無よりも、個々の具体的な経済的・社会的な状況によります。日本社会における犯罪を減少させるには、犯罪を引き起こす個々の状況や要因を冷静に分析し、犯罪者とならなくても暮らしていける社会的・経済的環境を作りだすことこそ、政治家や行政に求められています。「不法滞在者」をスケープゴートにして、警察や入管という取り締まり機関の増員や予算の増額獲得をはかり、「日本人犯罪被害者対外国人犯罪加害者」という構図を意図的につくりだし、現在の日本社会に充満する不満や不平をそらすことは許されません。

資料

平成15年10月17日

首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言
法務省入国管理局・東京入国管理局 東京都・警視 庁

1不法滞在外国人の現状

我が国に不法に滞在する外国人は,過去10年間における50万人近い者に対する退去強制の実施等の懸命の取組にもかかわらず,いまだ約25万人(推計)に上って おり,その約半数が首都東京にとどまっていると推測される。

不法滞在者は,その多くが不法就労活動に従事しているほか,安易に金を得るため犯罪に手を染める者も少なくなく,さらには,暴力団等と結託し,あるいは犯罪グループを形成するなとして,凶悪犯罪に関与する者も増加しているなど,一部不法滞在者の存在が,多発する外国人組織犯罪の温床となっているとの指摘があり,我が国の治安対策上,これら不法滞在者問題の解決が喫緊の課題となっている。

2 今後の具体的な取組み

このような状況を改善するため,まずもって,首都東京の不法滞在者を今後5年間で半減させることを志向し,法務省入国管理局・東京入国管理局,東京都及び警視庁は,法務省刑事局・最高検察庁及び警察庁の参加も得て,その方策について検討を重ねた結果,相互の連携を抜本的に強化するとともに,当面,以下のような取組みを多角的かつ総合的に推進することとした。

(1)不法滞在者の摘発強化と効率的な退去強制

不法滞在者については,不法滞在期間の長短を問わず、これまで以上に積極的に摘発する方針で臨み,出入国管理及び難民認定法第65条を活用するなどして,早期かつ効率的に退去手続を進めるとともに,いわゆるリピーター等の悪質な不法滞在者に対しては,厳正な処罰に向けた捜査を実施する。

不法滞在者の摘発を飛躍的に強化するため,東京入国管理局と警視庁との連携を準化し,合同摘発の恒常化を図るとともに,警視庁警察官による不法滞在者に対する職務質問等の強化を図る。

東京入国管理局において摘発・退去強制部門の人的体制の強化及び収容施設の効率的活用に努めるとともに,東京入国管理局から緊急に対応する必要があるとして留置嘱託依頼及び退去強制令書の執行依頼があった場合,警視庁において可能な限りこれに協力するなど,業務支援に努める。

退去強制に当たり,対象者が旅券を所持していない場合,大使館等から旅券の発給を受ける必要があるが,国によっては,対象者が帰国を希望しない場合は発給しなかったり,発給が遅延することがあるため,関係国に対する働きかけをより積極的に実施する。

(2)入国・在留資格審査の厳格化

留学・就学,研修,興行,日本人の配偶者等の資格で入国する者の中には,在留資格は名目のみで,当初から不法就労を目的としている者が数多く存在しており,その手段も悪質巧妙化し,その資格審査が困難化してきているため,実態調査の強化をはじめとする審査の厳格化を図るとともに,関係機関相互の情報交換を密にして関連事犯の取締りを強化する。そのため,東京入国管理局,警視庁及び東京都は,相互の連携を抜本的に強化し, 東京入国管理局の審査部門における実態調査能力の強化をするなどの諸施策を検討 する。

(3)不法滞在を助長する環境の改善と悪質事案の徹底取締り

不法滞在者の多くは,不法就労をその滞在目的としているが,こうした状況を悪用して経済的利益を得ようとする雇用主,ブローカー等が,依然として不法就労を助長していることに加え,近年,旅券等を偽変造したり,日本人の配偶者等の在留資格を悪用するなど,不法滞在及び不法就労助長の摘発を困難化させる手口が目立ってきているほか,不法就労によって得た経済的利得を海外送金するいわゆる地下銀行の存在が指摘されるなど,不法滞在を支える犯罪が増加している。これらの不法滞在を助長する環境の改善を図るため,不法就労助長罪による悪質な雇用主等の積極的な摘発等を継続的に推進する。

(4)その他

○ 首都圏における不法入国防止のため,東京都,千葉県,横浜市,川崎、警視庁,千葉県警察本部,神奈川県警察本部,関東管区警察局,東京入国管理局,東京税関,横浜税関及び第三管区海上保安本部で構成された「東京湾保安対策協議会」を活用し,連携強化を図る。

○ 留学生・就学生が関与する事件が増加傾向にあることから,これらを受け入ている教育機関に対する指導強化を図るため,東京都,警視庁,東京入国管理局等で構成された「留学生・就学生の違法活動防止のための連絡協議会」を設置し,留学生・就学生による違法活動防止の徹底を図る。

○ 外国人登録証明書は在留資格のない不法滞在者等にも発給され悪用されているところ,東京都,警視庁,東京入国管錘局,新宿区,渋谷区,豊島区で構成された「新宿・渋谷・池袋地区治安対策代表者会議」の幹事会において,これに関する実務的に有効な対策を検討する。

○ 新たな不法滞在者の増加を防止するため,我が国における不法滞在者の送出国との積極的な情報交換を図るとともに,当該国における出国審査の厳格化についての働きかけを強化する。


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