コムスタカ―外国人と共に生きる会

「外国人犯罪」問題


警察発表における外国人の人権配慮を求めて警察庁へ要請行動報告
中島真一郎
2005年4月13日

2005年4月5日、警察発表・広報等における外国人の人権に対する配慮を求めて、警察庁へ要請を行いました。国会議員の秘書の方とともに警察庁から参加が認められたNGO 「外国人差別ウオッチネットワーク」から4名(アムネスティ・インターナショナルの川上さん、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局長の矢野さん、自由人権協会の旗手さんとコムスタカ−外国人と共に生きる会の私)の参加者の一人として、参加しました。 

警察庁から、飯利雄彦氏(警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官付 警視正)ら6名が参加しました。警察庁からは、「会議室の都合で20分程度、最大30分以内にしてほしい」と入場前に言われましたが、午前11時からはじまり午前11時40分までの約40分行われました。最初に出席者の自己紹介をしたあと、まずアムネスティ・インターナショナルの川上さんが要請書の趣旨と以下の3項目の要請の骨子を説明しました。

(以下要請書の要旨です)

外国人差別ウオッチネットワークは、日本社会から外国人差別をなくし、多様な民族・国家の出身者に対して寛容な社会となることを目指し、2004年春に結成されたNGO等のネットワークです。外国人差別ウオッチネットワークでは、日本における外国人差別の実態を記録・分析し、差別をなくすための様々な取り組みを行っています。

警察庁は、毎年の『警察白書』や『来日外国人問題の現状と対策』において、「来日外国人犯罪の増大、凶悪化、組織化」を強調し、「来日外国人犯罪」の治安上の危険性を宣伝・広報し続けています。

また、各地の警察署では、外国人による犯罪への注意を呼びかける『防犯ちらし』や『地域安全ニュース』の掲示や配布を行っています。さらに、福岡県警察など一部の県警のホームページでも、「外国人犯罪」「来日外国人組織犯罪」という外国人だけを特定してホームページ上に通報サイトを設け情報提供の呼びかけを行うなど、外国人をあたかも「犯罪者」「犯罪予備軍」と見なす広報を行いつづけています。

警察という公的機関が「外国人」というカテゴリーでくくられた統計分析を公表したり、広報宣伝を行ったり、犯罪情報の提供を呼びかけるメール通報制度を行うことは、日本に在留する外国人を「犯罪者」「犯罪予備軍」とみなすことに等しく、在留外国人への差別と偏見を助長するものです。

その結果、在留外国人の就職や住居探しが困難となったり、職場でのいじめや子どもが地域や学校でいじめられるなど、日本社会での外国人への差別が強まり、人権侵害を引き起こしています。

警察庁や警察の発表・広報などによる在留外国人への人権侵害をなくし、在留外国人の人権保障の観点から以下の3つについて、警察庁や県警や各警察署などの宣伝・広報の是正を要請します。

1.外国人差別につながる「来日外国人」というカテゴリーでの統計分析の公表を廃止すること。少なくとも「警察白書」「来日外国人犯罪の現状」の発表にあたっては、外国人差別の助長につながらないよう配慮すること。
2.各県警のホームページでの「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記やメール通報制度を中止させること
3.各警察署の広報においては、「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記をやめ、外国人の人権に配慮した宣伝・広報を行うように指導の徹底をはかること。

以上の要請について警察庁の回答とそれに対する参加者からの反論です。

一、 要請項目 1、について

警察庁の飯利氏は、1につていて「実際に犯罪に関与していない大多数の在留外国人が『犯罪者』とみなされないように配慮した広報を行うことは必要」と理解を示しつつ、外国人のうち「来日外国人」を統計として公表している理由として、「来日外国人による犯罪が増加し、凶悪化、組織化がすすみ、地方への拡散が起きていることは客観的事実であり、国民へその事実を公表して、正しい理解を求めていく必要がある」といいました。

警察庁のいう「来日外国人」犯罪統計データに「客観性」がないこと、警察庁が意図的に「来日外国人」による犯罪を「増加・凶悪化・組織化・地方への拡散」を強調するのに都合のよいデータを選び公表していることを、私と自由人権協会の旗手さんから具体的な例や数字を挙げて反論しました。

A 「増加・凶悪化」への反論

・「来日外国人」による犯罪の増加の根拠として総検挙件数(特別法犯と刑法犯検挙件数を合計した)の増加が強調されているが、特別法犯と刑法犯はそもそも別個に考えるべきもので、本来合計値で示すことのできない概念なのに、総検挙件数を日本人を含んだ全国統計では使用せず、「来日外国人」においてのみ合算して公表していること。

・「来日外国人」の特別法犯の大半が形式犯といえる入管法違反者であり、それと刑法犯を合計して総検挙件数の統計で示していること自体がおかしいこと。

・ 総検挙件数には「来日外国人」特別法犯検挙件数の約8割(2004年で83%)を占める入管法違反者を含んでおり、しかも、政府の推計でも入管法違反者の8割以上を占める「不法残留者」はピークの1993年約30万から2004年約21万人と約3割減少していることから、10年前に比べて入管法違反者は3割程度は減少していることが客観的にはあきらかである。しかし、警察の入管法違反者の検挙件数は、2倍以上増加(1994年5916件から2004年12516件と2.1倍)しており、総検挙件数の増加は客観的な入管法違反者の増加を意味していないこと。

・「来日外国人」特別法犯検挙件数から入管法違反者を除いた検挙件数は、この10年ほとんど変化していないこと。(1993年2507件 1994年2337件 2004年2525件)

・「来日外国人」刑法犯件検挙件数の増加も、警察の摘発件数を示すものでしかなく、特に「来日外国人」刑法犯件検挙件数の大半(2004年 約86%)を占める窃盗犯検挙件数は、余罪が「来日外国人」については何百,何千件と日本人に比べて多くカウントされる差別的取扱いがなされており客観的な増加数を示していないこと。(注 余罪率=刑法犯検挙件数÷刑法犯検挙人員  2004年 日本全体の刑法犯の余罪率1.7件、来日外国人刑法犯余罪率 3.6件と2.1倍以上カウントされている。 2004年 日本全体の窃盗犯の余罪率2.3件、「来日外国人」窃盗犯の余罪率 5.8件と2.5倍以上となる。)

・「来日外国人」刑法犯あるいは凶悪犯が増加しているかは、日本全体の刑法犯あるいは凶悪犯検挙人員に占める「来日外国人」刑法犯あるいは凶悪犯検挙人員の構成比の推移で判断すべきであること、

・「来日外国人」刑法犯検挙人員の構成比は、1993年2.4%、1994年2.3%から2003年2.3%、2004年2.3%と、この10年増加していないこと、

・「不法滞在者」刑法犯検挙人員にいたっては、日本全体の刑法犯検挙人員に占める構成比は、この10年0.4%程度(1994年0.39% 1996年0.55% 2003年0.40% 2004年は0.36%)しかなく、近年減少していること、

・「不法滞在者」凶悪犯検挙人員の日本全体の「凶悪犯」検挙人員に占める構成比は2%台(1993年2.5%、1994年2.4%、1999年2.6% 2003年2.1%、2004年2.1%)でほとんど変化しておらず、「日本の治安悪化」の温床でも要因でもないこと。

・「来日外国人」犯罪加害者による日本人犯罪被害者の統計は公表するが、日本人犯罪加害者による来日外国人犯罪被害者の統計は公表しないことにみられるように、「来日外国人」対「日本人」という視点で犯罪統計を公表することが差別になること。

B 「来日外国人犯罪の組織化の進展」への批判

余罪のカウントが「来日外国人」に対して差別的になされている刑法犯(主に窃盗犯)検挙件数で統計を取っていることが自体がおかしいこと。

・警察の統計では、組織犯罪は「暴力団」と「来日外国人」とが並べて記載されているが、前者は「暴力団という犯罪組織の構成員による犯罪」という定義であらゆる罪種が対象となっているが、後者では刑法犯あるいは窃盗犯の複数犯の構成比の高さを組織化の進展の根拠としている。

・「来日外国人」組織犯罪を統計として示すときには、「暴力団」による場合と同様に、「来日外国人により構成されている犯罪組織の構成員による犯罪」で統計を公表すべきであり、主に窃盗犯が単独犯か、複数犯であるかは組織犯罪と直接関係ないこと。

C 「地方への拡散」への批判

・余罪が「来日外国人」の場合に日本人にくらべて多くカウントされる差別的取扱いがなされている刑法犯(主に窃盗犯)検挙件数で統計を取れば、1993年12771件に比べて2004年32083件と約2.5倍に増えているので、全国9管区の検挙件数も必然的に増加して見えることになる。

(注  2004年は、地区別では関東管区の刑法犯検挙件数が2003年7456件から14311件と1.92倍となっており、他の8管区は概ね減少か、微増にすぎない。又罪種別では、自販機ねらいの検挙人員は2003年61人から2004年29人と半減しているのに、その検挙件数は2003年5355件から2004年7336件と1981件増加している。「来日外国人」自販機ねらいの余罪率(一人当たりの余罪件数)は、253件と異常な数値となっている)

・地方への拡散の根拠とされている刑法犯検挙件数の増加は、特定の外国人のグループの犯罪を特定管区(中部、関東、警視庁など)の警察が大幅な余罪のカウントにより増加がおきているに過ぎず、客観性がないこと。

・「来日外国人」刑法犯検挙人員は、1993年7276人から2004年8898人と1.2倍程度しか増加していないので、刑法犯検挙人員で各地方管区の推移を統計で示せば、緩やかな増加にすぎないこと。この10年余りで「来日外国人」人口は、1.3倍〜1.4倍に増えているので、構成人口比で見ると、むしろ減少していること。

以上、警察庁の「来日外国人」犯罪の「増加・凶悪化・組織化・地方への拡散」の主張には、客観的な根拠がないと反論をしました。

飯利氏は、上記の反論を聞いて、さすがに警察庁のデータに「客観性」があるということだけでは不十分と感じたのか、在留外国人のうち「来日外国人」のみを対象とした犯罪統計を公表し続けることの理由を次のように追加説明しました。

「特定することが困難で身元確認ができない外国人であること、 捜査や取調べで日本語の話せない外国人であることが、永住者などの外国人と異なるため統計の集約と公表が必要と判断している」とのべました。

これに対して、私から、「来日外国人」に含まれる外国人のうち、「短期在留者」を除けば、「定住者」「日本人配偶者等」は長期に日本に定住しているか、定住していく人たちであり、永住者等とかわらないこと、

外国人登録をしている在留外国人であれば身元確認や特定することは可能で、それが困難なのは短期滞在者と、「不法滞在者」に限定されるのではないのか、日本語で取調べが困難なのは、日本国籍を有している帰国者や帰国子女にもありうることで、今の理由は理由とならない」と反論しました。

ニ、要請項目2について、

私から、熊本県警HP(ホームページ)での2004年7月からの「 皆さんの周りで、○不審な外国人がうろついている ○ 不審な外国人がたむろしている  などを発見したら、110番又は最寄の交番・駐在所」へご連絡下さい。メールによる情報も受理しています。」という表記が、NGOの抗議で同年8月より「不審な人・船・車を発見したら110番」という「外国人」を特定しない表記に改められ、このページ上のメール通報も削除された事実を紹介しながら、福岡県警のHPでは「外国人犯罪」「来日外国人組織犯罪」のメール通報制度をNGOの抗議にもかかわらず、以前として継続しており、警察庁から是正・削除するように指導を求めました。

三 要請項目3について

移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局の矢野さんから、「外国人差別ウオッチネットワーク」のメンバーによる地域実態調査の結果に基づき、外国人への差別表現となる警察署の広報チラシの問題を具体例を示しながら指摘し、その是正を求めました。また特定の言語(例えば中国語)だけ強調して記載して外国人へ警告する広報チラシも差別に当たるという指摘をしました。

四、 終わりに

警察庁の飯利氏は「在留外国人の大多数が犯罪に関与することなく暮らしていることは十分承知しており、そのような人々が差別をうけることのないように警察としても配慮していきたい。今日お伺いしたご意見や要請は、今後の参考にさせていただくとともに、に取り入れるべきところは取り入れていきたい」と述べました。

自由人権協会の旗手さんから、「治安悪化」の根拠とされている近年の認知件数の急増は、警察の受理方針の変更により引き起こされており、「治安悪化」という事実認識自体に疑問があること、また、警察庁の統計の公表問題とともに、警察庁がマスコミに配布して説明するプレスリリースの内容やそのあり方に問題があること指摘されました。

私から「来日外国人犯罪者対日本人犯罪被害者」という視点で犯罪統計を集約し公表していることに問題があること、来日外国人を日本社会の構成員として認める視点に改め、外国人の人権に配慮した広報が実現できるようにしてほしい。

また、各県警のHPによる警察行政情報の提供も、日本語だけでなく予算を計上して多言語化するなど、外国人との共生をめざす警察行政あり方にかえてほしいとのべました。

さらに、「私たちの要請をこれまで述べてきたが、今回だけでは警察庁はすぐに改めることはしないと思われるので、今回を最初として今後とも、警察庁との要請や意見交換の場を継続し設けていきたい」と要請して、予定を10分超過して約40分間で終わりました。

それから、要請終了後、警察庁の1階ロビーで警察庁記者クラブの幹事社(毎日新聞社会部記者)に資料の配布と要請行動の報告をおこないましたが、警察庁以下の鈍い反応で、取材要請の対象でなく抗議の対象と思わされました。現在のような外国人を「犯罪者、あるいは、犯罪予備軍」とみなす風潮をつくりだした責任は、警察だけではなく、警察庁の「来日外国人」や「不法滞在者」による犯罪データ公表や見解を無批判に、かつ誇張して報道してきた警察庁記者クラブ所属記者の責任もあります。

コメント

警察庁への「外国人犯罪」問題での警察発表に関するNGOからの要請は、今回が初めてのものでした。今から3年前の2002年の1月に移住労働者と連帯する全国ネットワークの省庁交渉の一環として野党の紹介議員により、警察庁へ質問と要請を行うことが一旦決まりました。しかし、このときは、私が原案をかいた要請文に、警察庁の担当者が激怒して、「差別などしていない、批判を受けるいわれがない」として出席を拒否され、実現できませんでした。

あれから3年の月日をへて、今回ようやく「平成16年中来日外国人犯罪の検挙状況」などの「来日外国人」の犯罪統計分析を作成し公表している担当者と初めて直接会い、要請と意見交換会ができました。実現できたこと自体、警察庁もNGO側の意見を拒否や無視できなくなっていることのあらわれですが、要請をただ聞き置くという姿勢ではなく、参考にし、取り入れるべきところはとりいれようという対応の姿勢は感じられました。その意味では、警察庁も、「外国人」の人権に配慮した広報を意識せざるを得なくなっています。

一度実現できましたので、今後、警察庁はNGOからの要請や提言に話し合う場を拒否はできないと思います。今後も、年1回、単独であるいは省庁への要請行動の一環として警察庁へ要請を行い、差別広報の具体的な事実の指摘や提言を通じて要請し、廃止させ改善させていく可能性と必要性を感じました。

資料1  要請書

2005年4月5日

警察庁

警察庁長官 漆間 巌 様

警察発表・広報等における外国人の人権に対する配慮を求める要請書

外国人差別ウオッチネットワークは、日本社会から外国人差別をなくし、多様な民族・国家の出身者に対して寛容な社会となることを目指し、2004年春に結成されたNGO等のネットワークです。外国人差別ウオッチネットワークでは、日本における外国人差別の実態を記録・分析し、差別をなくすための様々な取り組みを行っています。

警察庁は、毎年の『警察白書』や『来日外国人問題の現状』において、「来日外国人犯罪の増大、凶悪化、組織化」を強調し、「来日外国人犯罪」の治安上の危険性を宣伝・広報し続けています。また、各地の警察署では、外国人による犯罪への注意を呼びかける『防犯ちらし』や『地域安全ニュース』の掲示や配布を行っています。さらに、福岡県警察など一部の県警のホームページでも、「外国人犯罪」「来日外国人組織犯罪」という外国人だけを特定してホームページ上に通報サイトを設け情報提供の呼びかけを行うなど、外国人をあたかも「犯罪者」「犯罪者予備軍」と見なす広報を行いつづけています。

警察という公的機関が「外国人」というカテゴリーでくくられた統計分析を公表したり、広報宣伝を行ったり、犯罪情報の提供を呼びかけるメール通報制度を行うことは、日本に在留する外国人を「犯罪者」「犯罪者予備軍」とみなすことに等しく、在留外国人への差別と偏見を助長するものです。その結果、在留外国人の就職や住居探しが困難となったり、職場でのいじめや子どもが地域や学校でいじめられるなど、日本社会での外国人への差別が強まり、人権侵害を引き起こしています。

日本は、21世紀に入り、世界各地からの移住労働者の渡来がますます増加し、今後一層、在留外国人の人権を保障し、在留外国人との共生をめざして行かなければならない時代を迎えようとしています。昨年10月に発表された外務省海外交流審議会答申においても、「犯罪・テロ・治安対策」に関する提言で、「外国人の人権確保に十分な配慮を払う」と明記されています。警察庁や警察の発表・広報などによる在留外国人への人権侵害をなくし、在留外国人の人権保障の観点から以下の3つについて、警察庁や県警や各警察署などの宣伝・広報の是正を要請します。

1.外国人差別につながる「来日外国人」というカテゴリーでの統計分析の公表を廃止すること。少なくとも「警察白書」「来日外国人犯罪の現状」の発表にあたっては、外国人差別の助長につながらないよう配慮すること。
2.各県警のホームページでの「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記やメール通報制度を中止させること
3.各警察署の広報においては、「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記をやめ、外国人の人権に配慮した宣伝・広報を行うように指導の徹底をはかること。

要請の趣旨

1.について

警察庁は、「来日外国人」についての犯罪統計分析や広報を行い続けています。いうまでもなく、外国人による犯罪は、特定の国籍・民族・人種・在留資格などの人によって行われているのではなく、具体的な個人やグループによって行われています。日本人の一部に犯罪者がいるに過ぎないのと同様に、在留外国人の一部に犯罪者がいるに過ぎません。

にもかかわらず、日本社会でおきている外国人による犯罪を、警察庁など公的機関が、特定の国籍・民族・人種・在留資格などによって分析し、その増加や凶悪化、組織化などを公表して宣伝することは、それ自体その集団への偏見と差別を助長する行為となります。さらに、発表にあたって常に増加した統計だけを強調することが、外国人犯罪の実態についてかけ離れたイメージをつくりあげ、社会全体に外国人による犯罪への恐怖を煽ることとなっています。仮に、特定の国籍・民族・人種・在留資格などで分類した集団に所属する者の犯罪数が増加し構成比が高くなることがあっても、それはその集団が「犯罪集団」であることや「犯罪を起こしやすい集団」であることを意味するものでなく、その集団の日本社会における経済的―社会的状況の問題として捉えられるべきです。

被差別部落民やアイヌ民族や在日韓国・朝鮮人などの日本社会におけるマイノリテイの犯罪動向を警察庁が分析・公表していないのは、それが差別となることを自覚しているからだと思います。このことは、「外国人」についても同様であり、「来日外国人」についても「駐留米軍関係者」や「定着居住者」(特別永住者、永住者、永住者の配偶者等の在留資格を持つ外国人)や「その他の在留資格不明者」と同様に統計分析の公表を廃止することを要請します。

2.について

福岡県警は、そのホームページ(HP)上の事件・事故に関する情報を呼びかけるコーナーで「外国人犯罪」というカテゴリーを設け、「来日外国人組織犯罪に関する情報提供にご協力を」とし、メールによる情報の提供を呼びかけています。(他の県警のHPでは、「外国人犯罪」「来日外国人組織犯罪」というカテゴリーを特定したメール通報による情報提供の呼びかけはなされておらず、全国で唯一福岡県警のみが設置)また、「お知らせ」には「来日外国人組織犯罪情勢」という説明が詳細になされています。サイトでは、ピッキングやクレジットカードをつかった詐欺事件が例として紹介されていますが、これらは国籍に関係なく日本人も行っている犯罪ばかりです。そのほか多くの警察のHPでも、「外国人犯罪」に対する防犯などの情報を掲載しています。

このように「外国人犯罪」という表記や「外国人犯罪」情報の提供を呼びかけるメール通報制度を行うことは、日本に在留する全ての外国人を「犯罪者」「犯罪者予備軍」とみなすことになり、在留外国人への差別と偏見を助長するものです。熊本県警のHPでは2004年7月「不法入国・不法滞在事犯の情報」提供を呼びかけるメール通報制度を設けて、その説明文には、「皆さんの周りで、○ 不審な外国人がうろついている。○ 不審な外国人がたむろしている。 などを発見したら、110番又は、最寄の交番・駐在所へご連絡下さい。メールによる情報も受理しています」とかかれていました。しかし、NGOから抗議の申し入れを受け、2004年8月から「外国人」を特定しない、「外国人」の人権を配慮した表現に変更されています。

警察庁が、各都道府県警察に対して、HPで「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」など「外国人」を特定した表記や、メール通報制度の中止させるよう指導するよう要請します。

3.について

 各警察署の「防犯ニュース」または「交番だより」などにおいて、外国人犯罪に対する防犯を呼びかける広報物が作られ、金融機関や地域の掲示板などに掲示されています。一例をあげると、「不良来日外国人による注意そらし盗多発」(大崎警察署)「犯人は東南アジア系・南米系・インド系外国人グループ」(蔵前警察署)という表記がなされています。また、「指名手配書」において、容疑者が特定されていないにもかかわらず「中国人風」あるいは「外国人風」とかかれているものもあります。

このような広報物が掲示・回覧されることにより、「外国人」=犯罪者というイメージが地域社会のなかに広められ、差別を助長しその結果、外国籍市民がさまざまな差別を受け、人権侵害が引き起こされています。

防犯をよびかける広報においては、「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記をやめ、外国人の人権に配慮した宣伝・広報を行うように指導の徹底を図るよう要請します。

外国人差別ウオッチネットワーク

参加団体
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
移住労働者と連帯する全国ネットワーク>
社団法人自由人権協会
日本カトリック難民移住移動者委員会
ピースボート
入管問題調査会
全統一労働組合
特定非営利活動法人東京エイリアンアイズ(TAE)

連絡先
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-7 小笠原ビル7F
TEL:03-3518-6777 FAX:03-3518-6778

移住労働者と連帯する全国ネットワーク
東京都文京区小石川2-17-41
富坂キリスト教センター2号館203号室
пF03-5802-6033 FAX:03-5802-6034

資料2

警察発表における外国人の人権配慮を求めて警察庁へ要請

「外国人差別ウオッチネットワーク」では、本日4月5日、警察発表・広報等における外国人の人権に対する配慮を求め、警察庁へ要請を行った。NGOからの警察発表に関する要請は、今回が初めてのものである。

「来日外国人犯罪」というカテゴリーでの統計発表や各県警・警察署の広報で「来日外国人犯罪」という表記を行うことは、外国人を「犯罪者」「犯罪者予備軍」とみなすことに等しく、差別と偏見を助長するものである。

要請内容の骨子は、以下の通りである。

1.外国人差別につながる「来日外国人」というカテゴリーでの統計分析の公表を廃止すること。少なくとも「警察白書」「来日外国人犯罪の現状」の発表にあたっては、外国人差別の助長につながらないよう配慮すること。
2.各県警のホームページでの「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記やメール通報制度を中止させること
3.各警察署の広報においては、「外国人犯罪」「来日外国人犯罪」という「外国人」だけを特定した表記をやめ、外国人の人権に配慮した宣伝・広報を行うように指導の徹底をはかること。

この件に関するお問い合わせは:

外国人差別ウオッチネットワーク

連絡先:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-7
小笠原ビル7F
TEL:03-3518-6777 FAX:03-3518-6778

移住労働者と連帯する全国ネットワーク
東京都文京区小石川2-17-41
富坂キリスト教センター2号館203号室
пF03-5802-6033 FAX:03-5802-6034


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