2009年改定版「治安悪化」のスケープゴートとされる外国人

犯罪統計から見る「来日外国人」「不法滞在者」による犯罪の実像 

2009年8月10日 中島 真一郎 (コムスタカー外国人と共に生きる会)

この文章は、『経済』(新日本出版社)の2007年12月号に「治安悪化のスケープゴートとされる外国人」

(中島真一郎)として掲載されたものを加筆修正したものです。

1989年から1996年、そして2007年、2008年のデータを追加し、1989年から2008年までの

20年間のデータを分析しました。また、「正規滞在者」と比べた「不法滞在者」による「侵入窃盗」「侵入窃盗」の

「構成比」の高さを理由とする「不法滞在者」による『体感治安悪化論』を批判する文章を追加しました。

 

はじめに

警察やマス・メディアによる「外国人犯罪」の宣伝や報道には看過できない問題がある。個々の具体的な

凶悪な事件の被疑者が外国人である事件を、マス・メディアが大きく報道していくことによる影響もあるが、

『警察白書』等の「来日外国人」(注1)犯罪統計データによる「来日外国人犯罪の増加・凶悪化」の警察の

広報・宣伝が大きな影響を与えている。

 

注1:警察庁の定義では、「来日外国人」とは、在留外国人のうち定着居住外国人(「特別永住者」、「永住者」、

「永住者の配偶者等」の在留資格者)と駐留米軍関係者と「在留資格不明者」を除いた外国人のことで、

「短期滞在者」を含む25種類の在留資格者と在留資格を有しない「不法滞在者」で構成される。

 

一般論で言えば、「来日外国人」による犯罪は、国際化によりその構成人口が毎年増大していくので、

増加傾向となることが予想できる。しかしながら、警察は、後で見るように取り締まりの結果にすぎない

「検挙件数」や「検挙人員」の増加を、「来日外国人」による犯罪の増加とすり替えて、「来日外国人」や

在留資格のない「不法滞在者」(注2)をスケープゴートにして、「治安の悪化」を印象づけ続けている。

はたして、事実はどうなのか。犯罪統計の見方、扱い方について、以下、具体的に検討する。

 

注2:「不法滞在者」とは、正規の在留資格を得て入国後在留期限を超えて滞在している「不法残留者」、

「偽造旅券」や「密入国」など有効の旅券を持たずに入国した「不法入国者」、上陸許可を得ずに

上陸した「不法上陸者」等によって構成されている。

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1、「外国人犯罪統計」の限界とその読み方

-------------------------------

(1)認知件数」が不明で、「検挙件数」「検挙人員」で示すしかない外国人犯罪統計

 犯罪発生数の増減を論じるときに一般的には「認知件数」(注3)や

「犯罪(発生)率」(注4)が使われる。

 

注3:「認知件数」とは、犯罪について、被害の届出、告訴、告発その他の端緒により、

警察などが発生を認知した事件の数をいう。認知件数には「暗数」(犯罪被害者から被害届

けがなされない犯罪や被害届けがなされても警察が受理しない犯罪)は含まれていないので、

客観的な犯罪発生数をあらわすものではない。

注4:「犯罪発生率」とは、人口10万人あたりの認知件数を意味する。

外国人による犯罪は、認知件数が不明なため「犯罪発生率」が算出不能であること、「来日外国人」には、

構成人口が不明な「不法入国者・不法上陸者」を含む「不法滞在者」や、膨大な数の「短期滞在者」(2008年新規

の「短期滞在者」入国者数737万人)を含むため、その構成人口そのものが算出困難である。それゆえ、「来日外国人」や

「不法滞在者」の犯罪発生率は不明である。

 

 認知件数は、被害届け・警察の犯罪の認知という過程をへて算入されることから当然であるが、

ある年の日本全体の刑法犯認知件数のうち「外国人」によるものがいくらあったかなどは不明で、

「外国人刑法犯認知件数」を示すことはできない。つまり、警察が検挙後に被疑者の国籍が、

外国籍であることがわかるだけである。それゆえ、「外国人犯罪」の場合、犯罪統計で使われるのは、

警察の取り締まり結果を示すにすぎない「検挙件数」及び「検挙人員」で示すことしかできない。

また、これまでの警察やマス・メディアの「外国人犯罪増加キャンペーン」により、日本社会において「来日外国人は、

日本人等と比べて、犯罪(発生)率が高いとか、犯罪をおかしやすい」という説が根強く作り出されている。しかし、

犯罪統計からは、外国人の犯罪(発生)率は算出できず、算出不能で「不明」としかいいようがない。なお、警察庁も、

「来日外国人」による犯罪の増加については、強調するも、外国人の「犯罪発生率」の高さ等について、言及していない。注5

 

注:5 1998年の『平成10年版 警察白書』まで、「検挙人員全体に占める来日外国人構成比の高さ」という

項目が掲載されていた。しかし、1999年改定入管難民認定法案の審議の過程で、法務大臣が「来日外国人」には

、「不法滞在者」や「短期滞在者」が含まれており、「来日外国人」人口構成比を日本全体の1%として算出していること

の不自然さを追及され、以後翌年の『平成11年版 警察白書』から

この項目は削除されて現在に至っている。

 

警察庁は、「刑法犯」(注6)と「特別法犯」(注7)をあわせた「総検挙件数」・「総検挙人員」の増加や、

「刑法犯検挙件数」の増加を根拠に、「来日外国人」による犯罪の「増加・凶悪化」を宣伝し、マス・メディアが

それを検証なく報道している。

しかしながら、「外国人犯罪」の増加を、「検挙件数」や「検挙人員」、さらに「総検挙件数」・「総検挙人員」の

増加で示すことには、以下述べるように大きな限界がある。

 

注6:「刑法犯」とは、道路交通関係業務上過失罪等を除いた刑法等に規定された罪をいう。「凶悪犯」「粗暴犯」

「窃盗犯」「知能犯」「風俗犯」「その他の刑法犯」の6つの包括罪種がある

注7:「特別法犯」とは、刑法犯等の罪を除いた罪をいう(但し、「道路交通法」等交通関係法令違反を除く)。

特別法には、「覚せい剤取締法」「入管法」「風営適正化法」「銃刀法」「軽犯罪法」「労働基準法」「公職選挙法」

等がある。「特別法犯」には、被害者のいない認知件巣が不明な犯罪が多く、「刑法犯」とは性格が異なる。

 

(2)「来日外国人」特別法犯検挙件数・検挙人員の限界

《入管法違反の取締り強化による増加》

「来日外国人」特別法犯の約7−8割は『出入国管理及び難民認定法』(以下、入管法)違反者が占めている。

1993年の約30万人の「不法残留者」は、200711日現在約17万人、200811日現在約15万人、

200911日現在約11万人と減少しており、「不法残留者」が大半を占める入管法違反者は、この16年

間で約6−7割減少していると推定できる。しかしながら、1993年と2006年を比べると、入管法違反の

検挙件数は、4393件から10100件と2.3倍、検挙人員は、3618人から8690人と2.4倍に増加している。

私が、「検挙件数や検挙人員は、警察の取締りの結果を示すにすぎず、犯罪の増減をしめしているわけではない」

というのは、このことを示している。つまり、2006年「不法残留者」は1993年と比べて約4割以上減少

しているのに、警察の取締り強化の結果として、検挙件数、検挙人員は約2倍以上に増えているのである。

この内容を、正確に広報しないで、「来日外国人」特別法犯の「検挙件数」・「検挙人員」の増加を根拠として、

「来日外国人犯罪」の増加を論じることは、外国人への誤解と偏見を広げることになる。特別法犯の

「検挙件数」・「検挙人員」の増加は、犯罪発生数の増加を示す指標として使えない。

 

《外国人犯罪だけ、なぜ特別法犯と刑法犯の数を加える不可解さ》

さらにいえば、被害者のいない犯罪が大半を占める「特別法犯」は認知件数が不明で、

「刑法犯」と性格を異にする。

したがって「特別法犯」と「刑法犯」を合計する「総検挙件数・総検挙人員」という

概念は成り立たず、

『警察白書』『犯罪白書』など日本全体の犯罪統計では使われていない。にもかかわらず、

警察庁の「来日外国人」犯罪統計では、「総検挙件数・総検挙人員」を使用している。

警察の取締りの結果、入管法違反での検挙件数・検挙人員が増えると、当然「総検挙件数・

総検挙人員」が増える。その増加をもって、あたかも「来日外国人」による犯罪の増加と

すり替えて強調している。警察の意図的と思えるこうした統計数字の操作については

余り知らされていないのである。

 

(3)「来日外国人」刑法犯検挙件数の限界

一般的に言って、「検挙件数」が「検挙人員」より多くなるのは、余罪が「検挙件数」に

含まれるためである。

そして、「来日外国人」刑法犯検挙件数は、日本全体の刑法犯と比べて、異常とおもえ

るほど余罪のカウントが

多くなされている。

例えば、2008年の刑法犯の「余罪率」(刑法犯検挙人員一人当たりの刑法犯検挙件数)(注8)は、

日本全体の刑法犯では1.7件だが、2008年「来日外国人」刑法犯では3.2件と、約2倍近く    

になっている。これは、警察が、日本人による犯罪の場合、通常は立件に必要な数件や数十件の

余罪の追及にとどまるのに対して、「来日外国人」による「自販機荒し」「車上狙い」などの

非侵入盗の犯罪を、一グループあたり何百件、何千件と、その余罪をカウントして算出して

いるためである。そのため、「来日外国人」刑法犯検挙件数は、犯罪発生数の客観的

増加を示す指標としては使えない。

 

注:8 「余罪」とは、一人の被疑者や被告人の容疑事実となっている犯罪以外の犯罪のことをいう。

 刑法犯の「余罪率」(刑法犯検挙人員一人当たりの刑法犯検挙件数)は、1994年以前は、

「日本全体」(1994年 2.5件)の方が、「来日外国人」(1994年 1.9件)より多かった。

しかし、1995年以降は、「来日外国人」の方が「日本全体」よりも多くなる。これは、

警察の捜査方針が「日本全体」としては、余罪の追及より検挙人員の増加を重視する方針に

転換していく一方、「来日外国人」については、逆に余罪の追及を厳しくして、検挙件数を

増加させているためである。

 

(4)「来日外国人」刑法犯検挙人員の限界

「来日外国人」刑法犯検挙人員も、事後的に警察により検挙された人員を示すに過ぎない指標である。

さらに警察がある罪種、例えば「占有離脱物横領罪」(「留学生」「就学生」は、刑法犯の中では「占有離脱物横領罪」、

つまり放置自転車の無断使用などで検挙される比率が高いことが知られている)の取締りを重点的に行えば、

その犯罪の検挙人員は増大していく。これも警察の取り締まり方針に左右されやすい指標である。

それゆえ、「来日外国人」検挙人員の増減が、「来日外国人」犯罪の増減を客観的に示すものではない。

 

(5)まとめ

このように「検挙件数」や「検挙人員」を指標とする「来日外国人」犯罪統計は、「来日外国人」による

犯罪の増減を客観的に示すものではない。しかも、すでに見たように、警察庁の公表している統計

数字の内容が「来日外国人の増加」を強調するように意図されている。

以上の限界を踏まえ、警察庁が公表している犯罪統計指標を用いて、日本社会の「来日外国人」及び

「不法滞在者」による犯罪の増減をどのように把握することができるのであろうか、私の見解は、

「検挙人員」の指標を各年ごとの増減比較ではなく、日本全体に占める構成比として、

一定の期間(例えば、10年間)の経年的にその変化を比較することで、大まかな増減の変化を

把握することができるというものである。

つまり、警察の犯罪統計指標のうち「検挙人員」の経年的推移を、日本全体に占める構成比で

みることで、「来日外国人」や「不法滞在者」による「刑法犯罪」「凶悪犯罪」の増減の大まかな推移を

把握することはできる

以下、1989年から2008年までの20年間の「来日外国人」と「不法滞在者」の「刑法犯」

検挙人員と「凶悪犯」の検挙人員の推移から、その増減を論じる。

出典  警察庁 ホームページ 「平成19年犯罪情勢」、「平成20年犯罪情勢」、
   各年版 『警察白書』及び  「来日外国人犯罪の現状」など犯罪統計資料 より

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2、外国人による犯罪は増加していない

「来日外国人」刑法犯の犯罪統計 (1989年から2008年の最近20年間 表1、)

「不法滞在者」刑法犯の犯罪統計 (1993年から2008年の最近16年間表2 より)

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(1) 「来日外国人」刑法犯検挙人員

1989年から2008年の最近20年間では、日本全体の刑法犯検挙人員が、2004389027人を

最大値に、最近3年間2006384250人、2007365577人、2008339752人と減少している

のと同様に、「来日外国人」刑法犯検挙人員は、2004年の8898人を最大値に、20068148人、2007

7528人、20087128人(前年400人減少、全国に占める構成比 2.1%)と減少している。 

「来日外国人」刑法犯検挙人員が全国刑法犯検挙人員に占める構成比も、1989年から2008年の最近20年間で、

最大値は1993年2.4%で、最低値は、1989年の1.0%であった。但し、1998年は1.7%まで低下しており、

1993年から1998年まで構成比は減少し、1999年1.9%から2003年2.3%まで増加、20042.3%、2005

2.2%、2006年2.1%へと減少し、 2007年2.1%、20082.1%へと横ばいとなっている。

「来日外国人」刑法犯検挙人員が全国刑法犯検挙人員に占める構成比は、19932.4%を最大値としており、

それ以降16年間の最低値が1.7%で、概ね2%前後となっており、増加傾向は見られない。「来日外国人」の

構成人口(9)が、最近20年間に1.4倍に増加していることを考慮すれば、減少しているといえる。

 

9「来日外国人」人口 ここでいう「来日外国人」人口は、警察庁の定義に基づき、外国人登録者数から永住者等

(「特別永住者」「永住者」「永住者配偶者等」の在留資格者)の在留資格者数を除き、それに推計「不法残留者数」を加えて

算出した推計値である。これによると、1993年約104万人、2007年約143万人で、1.4倍に増加している。但し、「不法入国者・

不法上陸者等」は、その数は不明である。また、「短期滞在者」も「90日以内」の滞在にすぎないので含めていない。

 

(2) 「正規滞在者」刑法犯検挙人員 

1989年から2008年の最近20年間で、「正規滞在者」刑法犯検挙人員は、20047505人を最大値に2005

7201人、20067073人、20076790人、20086514人(前年比276人減少)と減少傾向にあり、

最大値の20047505人と比べて、最小値である2008年は6514人と約1割以上減少している。

1989年から2008年の最近20年間で、「正規滞在者」刑法犯検挙人員が全国刑法犯検挙人員に占める構成比は

19891.0%を最小値、19932.1%を最大値であった。1993年以降の16年では、19981.3%が最小値であった。

つまり、19932.1%から19981.3%まで減少し、1998年から20041.9%まで増加、最近4年間は

20051.9%、20061.8%、20071.9%、20081.9%で推移している。

「正規滞在者」の構成人口が、最近15年間に約2倍近く増加していること10)を考慮すると、

「正規滞在者」刑法犯は、減少しているといえる。

 

10: 「正規滞在者」の人口は、外国人登録者のうち『定着居住者』(「特別永住者」「永住者」「永住

者の配偶者等」で構成される)の在留資格者を除いたもので構成され、1993年68万人から2007年

127万人へと2倍近く増加している。                                                                                        

但し、「正規滞在者」人口を構成する外国人登録の義務のない「外交・公用」の在留資格者と「短期

滞在」の在留資格者の大半は、外国人登録者数にふくまれていない。(2007年新規入国した「短期滞在」の在留資格者

738万人のうち約5万人が外国人登録をしている。)そのため、外国人登録者数から「定着居住者」数を差し引いても、

その分一致しない限界がある。

 

(3)「不法滞在者」刑法犯検挙人員 

1993年から2008年の最近16年間で、不法滞在者」刑法犯検挙人員は、19961632人を最大値に

20041393人、20051304人、20061075人、2007752,2008614人(前年比138人減少)

であり、最大値の19961632人と比べて、最小値である2008年は614人と6割以上減少している。

1993年から2008年の最近16年間で「不法滞在者」刑法犯検挙人員が全国刑法犯検挙人員に占める構成比も、

19960.55%を最大値に、20080.18%が最小値であり、6割以上減少している。そして、20000.51%以降

20010.42%、20020.40%、20030.40%、20040.36%、20050.34%、20060.28% 2007

0.21%、20080.18%と8年連続減少している。「不法滞在者」の構成人口(11)が、最近16年間に6割以上

減少していることを考慮しても、「不法滞在者」刑法犯には、増加傾向は見られない。

11 「不法滞在者」の構成人口は、「不法入国者」「不法上陸者」が不明のため算定できないが、「不法滞在者」の構成人口の

7〜8割を占める「不法残留者数」(法務省が公表している推計値)によると、1993年約30万人から、2007年約17万人、2008年約15万人、

2009年約11万人へと約3分の1まで減少している。

 

(4)まとめ

 以上、1989年から2008年最近20年間の刑法犯検挙人員の推移から、「来日外国人」及び「正規滞在者」

の刑法犯検挙人員は、1989年から1993年まで増加したが、日本全体の刑法犯検挙人員の増減に概ね対応して

1994年以降から1998年まで減少、1999年から2004年までは増加、2004年を最大値に、最近4年間は減少している。

また、「不法滞在者」の刑法犯検挙人員は、19961632人を最大値として、2008614人を最小値とする。

1996年以外にも20001603人、2003年1520人の2つの山があるが、2004年以降最近4年間は減少し、

2008614人は19961632人と比べて6割以上減少している。

日本全体の刑法犯検挙人員に占める構成比からみて、「来日外国人」は、過去20年間、19891.0%を

最小値、1993年の2.4%を最大値とする。1993年以降では、1998年の1.7%を最小値として、2008

2.1%へと変化しているが、1999年以降から2008年までの最近10年間では、概ね全国の刑法犯検挙人員の

.1%程度とほとんど変化していない。

そのうち、「正規滞在者」は、過去16年間、1993年の2.1%を最大値に、1998年の1.3%を最小値として

20081.9%へと変化している。2000年から2008年の最近9年間は、全国の刑法犯検挙人員の2%弱を推移

しており、増加傾向も、犯罪の温床でもない。また「不法滞在者」は、1996年の最大値0.55%から2008

年最小値0.18%へと減少しており、その構成比の小ささと、増加傾向にないことから、日本の犯罪の温床

でも、「治安悪化」の要因でもない。

表1  「来日外国人」 及び「不法滞在者」刑法犯検挙人員の犯罪統計

      最近20年間(1989年から2008年)

 年

全国刑法犯検挙人員

来日外国人
刑法犯

検挙人員

全国に占める

構成比(%)

不法滞在者刑法犯検挙人員

全国に占める

構成比

1989

312992

2989

1.0

 

 

1990

293264

2978

1.0

 

 

1991

296158

4813

0..2

 

 

1992

284908

5961

2.1

 

 

1993

297725

7276

2.4

1015

0.34

1994

307965

6989

2.3

1215

0.39

1995

293252

6527

2.2

1315

0.45

1996

295584

6026

2.0

1632

0.55

1997

313573

5435

1.7

1317

0.42

1998

324263

5382

1.7

1302

0.40

1999

315355

5963

1.9

1529

0.48

2000

309649

6329

2.0

1603

0.51

2001

325292

7168

2.2

1379

0.42

2002

347558

7690

2.2

1403

0.40

2003

379602

8725

2.3

1520

0.40

2004

389027

8898

2.3

1393

0.36

2005

386955

8505

2.2

1304

0.34

2006

384250

8148

2.1

1075

0.28

2007

365577

7542

2.1

752

0.21

2008

339752

7148

2.1

614

0.18

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

表2  「正規滞在者」及び「不法滞在者」 刑法犯検挙人員の犯罪統計

最近16年間(1993年から2008年)

   年

全国刑法犯検挙人員

正規滞在者
刑法犯

検挙人員

全国に占める

構成比(%)

「不法滞在者」

刑法犯

検挙人員

全国に占める構成比(%)

1993

297725

6261

2.1

1015

0.34

1994

307965

5774

1.9

1215

0.39

1995

293252

5212

1.8

1315

0.45

1996

295584

4384

1.5

1632

0.55

1997

313573

4118

1.3

1317

0.42

1998

324263

4080

1.3

1302

0.40

1999

315355

4434

1.4

1529

0.48

2000

309649

4726

1.5

1603

0.51

2001

325292

5789

1.8

1379

0.42

2002

347558

6287

1.8

1403

0.40

2003

379602

7205

1.9

1520

0.40

2004

389027

7505

1.9

1393

0.36

2005

386955

7201

1.9

1304

0.34

2006

384250

7073

1.8

1075

0.28

2007

365577

6774

1.9

754

0.21

2008

339752

6514

1.9

614

0.18

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

----------------------------------------

3、外国人による凶悪犯罪は

増加していない

「来日外国人」凶悪犯の犯罪統計(1993年から2008年の最近16年間  表3より)

「不法滞在者」凶悪犯の犯罪統計1993年から2008年まで最近16年間 表4より)

----------------------------------

 (1)「来日外国人」凶悪犯検挙人員

 日本全体の凶悪犯検挙人員が、19935190人を最小値として、20038362人を最大値に、20047519人、

20057047人、20066459人と減少しているのと同様に、「来日外国人」凶悪犯検挙人員は、198994人を

最小値として、2003年の477人を最大値に、2004421人、2005396人、2006297人、2007259人、

2008213人と最近5年間で5割以上減少している。

「来日外国人」凶悪犯検挙人員の全国凶悪犯検挙人員に占める構成比は、19973.2%を最小値として、

20035.7%を最大値に20045.6%、20055.6%、20064.6%、20074.4%、20083.8%と

減少している。

 

(2)「正規滞在者」凶悪犯検挙人員 

「正規滞在者」凶悪犯検挙人員は、2003302人を最大値に、2004年261人、2005253人、2006202人、

2007197人、2008179人と、2003年と比べて2008年は、6割以上減少している。

「正規滞在者」凶悪犯検挙人員の全国凶悪犯検挙人員に占める構成比も、20033.6%を最大値に20043.5%、

20053.6%、20063.1%、20073.3%、20083.2%と減少傾向にある。


 (3)「不法滞在者」凶悪犯検挙人員 

「不法滞在者」凶悪犯検挙人員は、2000186人を最大値に、2004年160人、2005年142人、200695人、

200762人、200834人と、2000年と比べて2008年は、5分の1に減少している。「不法滞在者」凶悪犯

検挙人員の全国凶悪犯検挙人員に占める構成比も、19992.6%を最大値に20032.1%、20042.1%、

20052.0%、20061.5%、20071.0%、20080.6%と減少している。


 (4)まとめ
 以上から、最近16年間の「凶悪犯」検挙人員の推移からみて、「来日外国人」の凶悪犯検挙人員は、

日本全体の凶悪犯検挙人員の増減に対応して、最近5年間では6割以上減少している。うち「正規滞在者」

の凶悪犯検挙人員は3分の1、「不法滞在者」の凶悪犯検挙人員は3分の2以上減少している。

 また、その構成比からみて、過去16年間「来日外国人」は、全国の凶悪犯検挙人員の4%〜5%程度、

そのうち、「正規滞在者」が2〜3%程度、「不法滞在者」は、1%〜2%程度しか占めておらず、日本の

凶悪犯罪の温床ではない。

さらに、全国に占める構成比の変化も、1993年に比べて2007年は、「来日外国人」人口は、104万人から

143万人へ1.4倍に、うち「正規滞在者」人口は、68万人から128万人に2倍近くに増加しており、

「不法残留者」は、約30万人から約15万人へ約4割以上減少していると推定できるので、その構成人口の

変化を考慮しても、減少傾向にある。

表3  「来日外国人」及び「不法滞在者」凶悪犯

(殺人・強盗・強姦・放火の4つの罪種)の犯罪統計

     1993年から2008年までの最近16年間

   年

全国凶悪犯

検挙人員

来日外人 凶悪犯

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)

「不法滞在者」

凶悪犯

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)

1993

5190

246

4.7

130

2.5

1994

5526

230

4.2

133

2.4

1995

5309

201

3.8

106

2.0

1996

5459

212

3.9

142

2.6

1997

6633

213

3.2

131

2.0

1998

6949

251

3.6

137

2.0

1999

7217

347

4.8

186

2.6

2000

7488

318

4.2

159

2.1

2001

7490

403

5.4

180

2.4

2002

7726

353

4.6

141

1.8

2003

8362

477

5.7

175

2.1

2004

7519

421

5.6

160

2.1

2005

7047

396

5.6

142

2.0

2006

6459

297

4.6

95

1.5

2007

5923

259

4.4

62

1.0

2008

5634

213

3.8

34

0.6

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

表4   「正規滞在者」及び「不法滞在者」凶悪犯

(殺人・強盗・強姦・放火の4つの罪種)の犯罪統計

1993年から2008年の最近16年間

   年

全国凶悪犯

検挙人員

正規滞在者凶悪犯

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)

「不法滞在者」

凶悪犯

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)

1993

5190

116

2.2

130

2.5

1994

5526

97

1.8

133

2.4

1995

5309

95

1.8

106

2.0

1996

5459

72

1.3

142

2.6

1997

6633

82

1.2

131

2.0

1998

6949

114

1.6

137

2.0

1999

7217

161

2.2

186

2.6

2000

7488

159

2.1

159

2.1

2001

7490

223

3.0

180

2.4

2002

7726

212

2.8

141

1.8

2003

8362

302

3.6

175

2.1

2004

7519

261

3.5

160

2.1

2005

7047

253

3.6

142

2.0

2006

6459

202

3.1

95

1.5

2007

5923

197

3.3

62

1.0

2008

5634

179

3.2

34

0.6

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

 

----------------------------------------

4、「体感治安」による「不法滞在者犯罪脅威論」への批判  (その1)

「来日外国人」による侵入強盗・侵入窃盗の犯罪統計(1993年から2008年の最近16年間  表5、)、

「不法滞在者」による侵入強盗・侵入窃盗の犯罪統計(2003年から2008年の最近6年間  表6、)

----------------------------------------

これまで警察庁は、「検挙件数」の増加を主な根拠として「来日外国人」及び「不法滞在者」による犯罪の

「増加・凶悪化・組織化・地方への拡散」等を強調してきた。しかし、警察庁は、これらが根拠のないもの

であることへの批判を意識するようになってきたこと、また、「検挙件数」の指標によっても、2005年を

最大値として、2006年、2007年と2年連続減少するようになってきた。そのため、近年では、住民の「体感治安」に

不安を与えている「侵入強盗」や「侵入窃盗」の増加や、これらの犯罪での「正規滞在者」と比べて、

「不法滞在者」の構成比の高さを強調するようになった。まず、「来日外国人」及び「不法滞在者」による「侵入強盗」や

「侵入窃盗」検挙人員について検証してみる。

 (1)「来日外国人」侵入強盗犯検挙人員

最近15年間(1994年〜2008年)の日本全体の侵入強盗認知件数は、19971002件まで減少

傾向にあったが、1998年より増加に転じて20032865件と最大値となり、2004年から減少に

転じて20071700件と減少している。

日本全体の侵入強盗検挙人員も、日本全体の侵入強盗認知件数の変化に対応しており、1996610人を

最小値、20041356人が最大値として、最近4年間は、20051255人、20061107人、

2007968人、2008970人と減少している。同様に、「来日外国人」侵入強盗検挙人員は、

199743人を最小値として、2003年の218人を最大値に、2004201人、2005年 170人、

2006年 98人、2007年 71人、200845人と最近5年間で約8割減少している。

「来日外国人」侵入強盗検挙人員の全国侵入強盗検挙人員に占める構成比は、19976.0%を

最小値として、200316.6%をピークに200414.8%、200513.5%、20068.9%、

20077.3%と減少している。

 

 (2)「不法滞在者」侵入強盗犯検挙人員 

最近6年間(2003年〜2008年)「不法滞在者」侵入強盗検挙人員は、2003109人を最大値に、

2004年94人、2005年88人、200657人、200732人、200812人を最小値と、2003年と

比べて2008年は、8割以上減少している。「不法滞在者」侵入強盗検挙人員の全国侵入強盗検挙人員に

占める構成比も、20038.3%を最大値に20046.9%、20057.0%、20065.1%、20073.3%、

20081.2%と減少している。

 

表5 「来日外国人」侵入強盗の犯罪統計(検挙人員)

     1994年から2008年

   年

全国侵入強盗犯認知件数

全国侵入盗犯検挙人員

来日外国人

侵入強盗犯

検挙人員

侵入強盗犯検挙人員の全国に占める構成比(%)

1994

------

761

65

8.5

1995

1032

679

74

10.8

1996

1004

610

65

10.7

1997

1002

719

43

6.0

1998

1314

854

63

7.4

1999

1649

993

160

16.1

2000

1786

982

132

13.4

2001

2335

1094

138

12.6

2002

2436

1134

163

14.4

2003

2865

1310

218

16.6

2004

2776

1356

201

14.8

2005

2205

1255

170

13.5

2006

1896

1107

 98

8.9

2007

1700

968

0

7.3

2008

1647

970

45

4.6

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

表6 「不法滞在者」侵入強盗の犯罪統計(検挙人員)

    最近6年間( 2003年から2008年 )

   年

全国侵入強盗犯認知件数

全国侵入強盗犯検挙人員

「不法滞在者」

侵入強盗

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)   

2003

2865

1310

109

8.3

2004

2776

1356

94

6.9

2005

2205

1255

88

7.0

2006

1896

1107

57

5.1

2007

1700

968

32

3.3

2008

1647

970

12

1.2

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

(3)「来日外国人」侵入窃盗検挙人員

最近20年間(1989年〜2008年)の日本全体の侵入窃盗認知件数は、1997221678件まで減少傾向に

あったが、1998237703件より増加に転じて2002338294件と最大値となり、2003333233件から

減少に転じて、最小値2007175728件へと減少している。

最近20年間(1989年〜2008年)の日本全体の侵入窃盗検挙人員は、199418168人を最大値として、

おおむね減少傾向にあり、200811079人まで減少している。

「来日外国人」侵入窃盗検挙人員は、1994257人を最小値として、2003年の704人を最大値に、

2004565人、2005524人、2006441人、2007408人、2008342人と減少し、

最近5年間で約5割減少している。

「来日外国人」侵入窃盗検挙人員の全国侵入窃盗犯検挙人員に占める構成比は、19971.4%を

最小値として、2001年と20035.0%を最大値に20044.2%、20054.2%、20063.5%、

20073.4%、20083.1%と減少している。

 

 (4)「不法滞在者」侵入窃盗犯検挙人員 

最近6年間(2003年〜2008年)「不法滞在者」侵入窃盗検挙人員は、2003461人を最大値に、

2004年317人、2005年296人、2006164人、2007164人、2008154人を最小値と、

2003年と比べて2008年は、32ほど減少している。「不法滞在者」侵入窃盗検挙人員の全国侵入

窃盗検挙人員に占める構成比も、20033.2%を最大値に20042.3%、20052.4%、

20062.1%、20071.4%、20081.4%と減少している。


表7  「来日外国人」及び「不法滞在者」侵入窃盗の犯罪統計(検挙人員)

    最近14年間  1994年から2007年

   年

全国侵入窃盗犯

認知件数

全国侵入窃盗犯

検挙人員

来日外国人

侵入窃盗犯

検挙人員

全国に占め

る構成比(%)

1989

235079

19768

45

0.2

1990

227853

18807

62

0.3

1991

227946

18713

83

0.4

1992

233690

18111

146

0.8

1993

254516

18741

204

1.1

1994

247661

18168

257

1.4

1995

234586

16275

268

1.6

1996

223590

15866

308

1.9

1997

221678

15859

362

2.3

1998

237703

15480

390

2.5

1999

260981

15234

438

2.9

2000

296486

13651

674

4.9

2001

303698

13712

688

5.0

2002

338294

13696

658

4.8

2003

333233

14208

704

5.0

2004

290595

13548

565

4.2

2005

244776

12564

524

4.2

2006

205463

12434

441

3.5

2007

175728

12037

408

3.4

2008

155047

11079

342

3.1

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値 

8 「不法滞在者」侵入窃盗の犯罪統計(検挙人員)

    最近6年間  2003年から2008年

   年

全国侵入窃盗犯認知件数

全国侵入窃盗犯検挙人員

「不法滞在者」

侵入窃盗

検挙人員

全国侵入窃盗犯検挙人員に占め

る構成比(%)   

2003

333233

14208

461

3.2

2004

290595

13548

  317

2.3

2005

244776

12564

  296

2.4

2006

205463

12434

256

2.1

2007

175728

12037

164

1.4

2008

155047

11079

154

1.4

 ゴチ * 最大値       括弧 * 最小値

(3)まとめ
 以上から、最近16年間の侵入強盗検挙人員の推移からみて、「来日外国人」の侵入強盗検挙人員は、

日本全体の侵入強盗犯認知件数や検挙人員の増減に概ね対応しており、最近5年間は減少している。

また、最近5年間の「不法滞在者」の侵入窃盗検挙人員も、同様の傾向であり、「日本全体」と比べれば、

その絶対数もすくなく、構成比も小さい。

 

そして、最近16年間の「来日外国人」の侵入窃盗検挙人員も、日本全体の侵入窃盗犯認知件数の増減に

概ね対応しており、2003年を最大値として、最近5年間は減少傾向にある。最近6年間の「不法滞在者」

侵入窃盗犯検挙人員も、同様な傾向であり、「日本全体」と比べれば、その絶対数もすくなく、構成比も

小さく、その構成比も増加傾向にない。

 

 

 

----------------------------------------

5、「体感治安」による「不法滞在者犯罪脅威論」への批判( その2 )

2001年と2008年刑法犯検挙人員の罪種別の構成比からみる

「日本全体」「正規滞在者」「不法滞在者」の比較

----------------------------------------

刑法犯検挙人員の罪種別構成比を、「正規滞在者」と比べて、「不法滞在者」は、「凶悪犯」(特に「侵入強盗」)、

「窃盗犯」(特に「侵入窃盗」)の構成比が高いことを、警察庁は、「来日外国人」犯罪の温床となっているとみなし、

「治安悪化」の要因として「不法滞在者」取締りや規制強化の根拠としている。

しかし、先に述べたように「日本全体」のなかで、「不法滞在者」による「侵入強盗」「侵入窃盗」の検挙人員の数や

その構成比は、2008年「侵入強盗」12人、1.2%、「侵入窃盗」154人、1.4%と小さく、最近6年間減少傾向にある。

住民に「体感治安」への不安を与えているといわれる「侵入強盗」「侵入窃盗」の多くが「不法滞在者」以外の者、

日本社会で圧倒的な構成人口を占める「日本人」により行われている。「侵入強盗」や「侵入窃盗」は、検挙率(12)が

高く、逮捕される危険性が高い犯罪である。そのような危険性の高い犯罪を行う者の多くは、何らかの経済的困窮者である。

注:12 「検挙率」は、ある罪種の認知件数に占める検挙件数の割合を百分率で示したもの。 2008年「侵入強盗」の検挙率は

63.4 % 、2008年 「侵入窃盗」の検挙率は 56.1%である。

罪種別構成比の比較を、「日本全体」と「多重債務者(あるいは、経済的困窮者)」を比較した場合も後者の方は、

「侵入強盗」「侵入窃盗」の構成比が高くなることが予想される。しかし、警察庁は、「不法滞在者」のように、

「多重債務者」を「治安悪化」の要因として、その危険性を広報・強調し、取締りの対象としたり規制強化の政策を

とることはしていない。「多重債務者」による犯罪問題は、むしろ日本社会の「貧困」問題や社会政策の問題として

解決をめざすべき問題である。

以下の表9、10は、2001年と2008年の罪種別の刑法犯検挙人員の構成比を「日本全体」「正規滞在者」「不法滞在者」の

三者を比較したものである。

(参考までに、2001年の完全失業率5.0%  2008年完全失業率4.0% であり、2001年は、雇用状況が悪化している時期、

2008年は雇用状況が改善(但し、2008年10月以降は急激に悪化)している時期に当る。)

2001年刑法犯検挙人員の罪種別の構成比を「日本全体」と「不法滞在者」を比べると、「不法滞在者」の方は、「凶悪犯

(特に「強盗」、)、「窃盗犯」(特に「侵入窃盗」)、「知能犯」(「詐欺」「偽造」など)の構成比が高い、一方、「日本全体」の方は、

粗暴犯」(「傷害」「恐喝」など)や「その他の刑法犯」(「占有離脱物横領」「器物損壊」「住居侵入」など)の構成比が

高いという特色がみられる。

     「不法滞在者」の「その他の刑法犯」検挙人員数が少なく、その構成比が小さいのは、「正規滞在者」の場合

     「その他の刑法犯」検挙人員の約8割を占める「占有離脱物横領」(所有者不明の放置自転車等の占有)ではなく、

     「不法滞在者」の場合入管法違反容疑で逮捕されているためと考えられる。

「正規滞在者」は、「日本全体」の構成比に近くなるが、「強盗」や「窃盗」や「その他の刑法犯」の構成比がやや高く、

「粗暴犯」の構成比が低い。

2008年刑法犯検挙人員の罪種別の構成比では、「日本全体」と「正規滞在者」の構成比は、「強盗」「知能犯」がやや高い

ものの、それ以外はほとんど変わらなくなっている。また、「不法滞在者」の構成比も、2001年と同様な特色はあるものの、

2001年に比べて、「日本全体」の構成比に近づいている。

このことは、「不法滞在者」による犯罪、特に「侵入強盗」「侵入窃盗」を減少させる方法として、入管法の規制を緩和し、

合法的に入国や就労できるような状況に変えたり、すでに「不法滞在者」となっている外国人に在留特別許可を活用して、

在留資格を付与するなど合法化を進め、「正規滞在者」にしていくことで目的を達成できることを示唆している。

また、「日本全体」での「侵入強盗」「侵入窃盗」を減らすには、「貧困」や「格差」問題の解決、雇用状況の改善や福祉政策の

充実をはかることが必要である。「不法滞在者」を、いつでも日本から追いだせる存在と見るのではなく、日本社会の構成員

としてとらえ、「多重債務者」による犯罪問題の解決と同様の問題としてとらえていくべきである。

表9 2001年 「日本全体」「正規滞在者」「不正規滞在者」

罪種別の刑法犯検挙人員の構成比の比較

 罪   種

日本全体(構成比%)

正規滞在者(構成%)

不法滞在者(構成比%)

刑法犯総数

325292  (100)

5789   (100)

1379      (100)

凶悪犯

7490  (2.3)

223   (3.9)

180      (13.1

 うち殺人

1334  (0.4)

    29    (0.5)

     30       (2.2

   強盗

4096  (1.2)

   164    (2.8)

    145      (10.5

 うち侵入強盗

     1094(0.3)

    --

    --

粗暴犯

50428 (15.5

498    (8.6)

80      (5.8)

窃盗犯

168919 (51.9)

3262   (56.3)

873     (63.3

うち侵入窃盗

   13712  (4.2)    

---

---

知能犯

11539  (3.5)

159   (2.7)

108       (7.8

風俗犯

  6166  (1.9)

99  (1.7)

34       (2.5

その他

80750 (24.8)

1548  (26.7

104       (7.5)

出典 

「来日外国人犯罪の現状 (平成13年中)」(平成14年3月 警察庁来日外国人犯罪対策室)

 

表10 2008年 「日本全体」「正規滞在者」「不正規滞在者」

罪種別の刑法犯検挙人員の構成比の比較

 罪   種

日本全体

(構成比%)

正規滞在者

(構成比%)

不法滞在者

(構成比%)

刑法犯総数

339752  (100)

6534 (100)

614  (100)

凶悪犯

5634   (1.7)

179  (2.7)

34   (5.5

 うち殺人

1211  (0.36)

  43     (0.66)

   7   (1.1

0   強盗

2813  (0.83)

 132      (2.0)

  26      (4.2

   うち侵入強盗

   970 (0.29)

     39 (0.60)

    12  (2.0

粗暴犯

51924 (15.1

913  (14.0)

37     (6.0)

窃盗犯

174738  (51.4)

3327 (50.9)

347   (56.5

うち侵入窃盗

   11079 (6.3)

188  (2.9)

154   (25.1

知能犯

15145   (4.5)

363 (5.6)

143  (23.3

風俗犯

6048    (1.8)

83 (12.7

8    (1.3

その他

86263  (25.4)

166925.5)

45     (7.3)

出典 「来日外国人犯罪の検挙状況 (平成20年中)」(平成21年4月) 警察庁来日外国人犯罪対策室より作成

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