コムスタカ―外国人と共に生きる会

「外国人犯罪」問題


警察庁の「来日外国人犯罪の増加論」への批判

中島真一郎
2004年3月17日

1、はじめに

 2004年3月11日夕刊や3月12日朝刊での各社の「外国人犯罪」問題の記事は、警察庁の広報内容を紹介したものですから、今年秋に発刊される2004年版『警察白書』や2004年版『犯罪白書』で、「来日外国人犯罪の現状と対策」を扱う部分の主な内容となります。「外国人犯罪4万件突破、 03年 摘発人数も最多2万人突破 警察庁」という見出しに代表される、警察庁の検挙件数の増加を主な根拠とする「来日外国人犯罪の増加論」が、この10年以上にわたって繰り返され、日本のメディアが検証なしに報道しつづけた結果、広く深く世論に浸透し、日本社会の排外主義潮流の温床として肥大化し、「外国人犯罪」問題が、日本政府の「治安対策」の一つとなるまでに至りました。このことは、他方で多文化共生社会や、外国人の人権擁護を主張してきたNGOなど主体の側が、警察庁の「外国人犯罪の増加論」と十分に対峙せず、批判・抗議していく力が弱かった結果でもあります。現在の「治安管理」優先の危機的な状況を「人権優先」の在り方に変えていくには、警察庁の統計データを使った「外国人犯罪の増加論」を批判し、その根拠や実体のなさを暴き、公的機関や公文書での「来日外国人」犯罪データの公表や宣伝を差別としてやめさせていくこと、そして、警察庁のデータに依存し、無批判に「外国人犯罪」報道を続けるマスメディアの差別報道をやめさせていくことが必要です。警察庁の「来日外国人犯罪の増加論」への批判をまとめましたので、警察庁の「外国人犯罪の増加論」に惑わされず、その「増加論」と対峙し、批判していくための参考資料としてご活用下さい。

(データの出典 『平成15年度版犯罪白書』、警察庁ホームページ 『犯罪統計資料 平成15年1月〜12月分警察庁刑事局刑事企画課』などより)

2、2004年3月11日 熊本日日新聞 夕刊、共同通信社配信の記事

 見出し「外国人犯罪4万件突破、 03年 摘発人数も最多2万人突破 警察庁」(2004年3月11日 熊本日日新聞 夕刊、共同通信社配信)の記事紹介

「昨年1年間に全国の警察が摘発した来日外国人犯罪は4万615件で、前年より16・9%増え、初めて4万件を超えたことが十一日、警察庁のまとめでわかった。摘発人数も23.4%増の2万7人に達し、いずれも統計を取り始めた1980年以降で最多となった。国籍別では、中国人が件数、人数とも過去最多を更新した。発生地域別では刑法犯摘発件数が、十年前の1993年に比べ四国は7.3倍、中部は5.4倍に増え、全国的な広がりが鮮明となった。警察庁は、都市部の取締りが厳しくなったため、警戒が手薄な地域に犯行の舞台を移していると見ている。警察庁によると摘発件数は、殺人や強盗などの刑法犯が12.4%増の2万7258件、入管難民認定法違反などの特別法犯が27.4%増の1万3357件。摘発人数は、刑法犯が14.5%増の8725人、特別法犯が32.4%増の1万1282人。中国人は刑法犯、特別法犯合わせ、件数が31.9%、人数が38.7%増。どちらも全体の40%台を占めた。また、留学や就学の在留資格を入国したケースが目立っている。」

3、警察庁の「来日外国人犯罪の増加」論」への批判

 警察庁は、検挙件数と検挙人員の二つの指標を使い、その増加を『来日外国人』犯罪の増加の根拠であるかのように説明していますが、この二つの指標は警察の取り締まりの結果を表すものに過ぎず、実際の犯罪の増加を表すものではありません。
 2002年と比べて2003年の「来日外国人」の検挙件数、検挙人員の増加は、主に警視庁や関東管区の警察が、特別法犯では入管難民認定法違反容疑で集中的に取り締まり、刑法犯では窃盗犯の余罪を厳しくカウントしたことによりもたらされているもので、実際の「来日外国人」犯罪の増加を示しているものではありません。
 入管難民認定法違反容疑で集中的に取り締まれば取り締まるほど、「来日外国人」特別法犯の検挙件数と検挙人員を増加させることができます。また、窃盗犯の余罪を厳しくカウントすればするほど、「来日外国人」刑法法犯検挙件数を増加させることができます。検挙件数や検挙人員の「増加」を、「来日外国人」による犯罪の「増加」とすり替えて、「来日外国人」をスケープゴートにして、「治安の悪化」を印象付け、政治家の政治的利用や、警察官の増員や予算の増額などを訴える手段とすることが行われています。以下、2003年の「来日外国人」犯罪の検挙件数・検挙人員の2002年と比べての「増加」の内容を検証してみます。

4、基本用語解説

 (一般)刑法犯は、
道路交通関係業過を除いた刑法等に規定された罪の違反をいう。(2002年、認知件数、検挙件数、検挙人員のうち、交通業過は、約84万件、約84万件、約87万人、一般刑法犯は、約285万件、約59万件、約35万人です)以下、刑法犯は交通業過を除いた意味で使います。
 特別法犯は、
刑法犯等を除いた罪の違反のこと(風営適正化法、売春防止法、覚せい剤取締法、公職選挙法、入管難民法、外国人登録法、労働基準法等)。但し、特別法犯は、検察庁で受理された者しか統計上あらわれてきません。2002年検察庁新規受理人員約98万人のうち道路交通法違反が86万人(88%)、保管場所法違反約2万人(2%)を占めています。これら道路交通関係法を除いた者は、約10万人です。2002年道路交通法関係検挙件数は約783万件です。
認知とは、
犯罪について被害の届出もしくは告訴・告発を受理し、犯罪の発生を確認すること。従って、犯罪の発生があっても被害届けや告訴・告発がないと認知件数に含まれませんし、被害届けがあっても警察が事件として認知しない場合も認知件数に含まれません。1990年代の認知件数の増加は、とりわけ1999年以降の急増は、相談受付件数が1998年260万件から2002年369万件へ1999年以降急増しているためです。このように警察の相談体制の拡充や被害届けの受理方針の変更が認知件数の増加に大きな影響を与えています。
暗数
認知件数に含まれない犯罪。認知件数は、あくまで警察が犯罪と認知した件数を示すものであり、被害届けが出されない犯罪や被害届けを警察が受理しない場合には、認知件数に含まれないので、実際の犯罪発生数と認知件数には大きなギャップがある。(暗数は窃盗犯などで多く、罪種によっては認知件数の10倍以上あるものもあります。)
検挙とは、
犯罪について被疑者を特定し、送致・送付又は微罪処分に必要な捜査を遂げること、検挙人員は、あくまでも被疑者を表すものでしかありません。(なお、身柄拘束を伴う逮捕は、検挙人員の3割程度です) 2002年刑法犯検挙人員約34万人、起訴者約10万人、うち公判請求者約4万人、実刑者 1.8万人(新規受刑者は特別法犯も含めると約3万人)

5、総検挙件数4万件、総検挙人員2万人突破の意味?

(1)総検挙件数4万件突破の意味?
 刑法犯と特別法犯の検挙件数をあわせた総検挙件数は、2002年の34746件から2003年40615件と5869件増(前年比17.0%増)、全国の9の警察の管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比2997件増加(全国の増加数5869件の51%を占める)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比2466件増加(全国の増加数5869件の42%、特に神奈川は前年比800件増加と他県に比べて突出しています)を占めています。2002年に比べて2003年の総検挙件数の実に93%が、東京都・関東管区の10県の増加によるものです。このことは、警察庁の「来日外国人犯罪の地方への拡散」という宣伝と異なり、2003年に警視庁と神奈川県警が、「来日外国人」を集中的に取り締まった結果の「増加」であることを示しています。

(2) 総検挙人員2万人突破の意味?
 刑法犯と特別法犯検挙人員をあわせた総検挙人員は、2002年16212人から20007人と3795人(前年比23.4%増)となっています。全国9警察管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比2242人増加(全国の増加数3795人の59%を占める)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比862人増加(全国の増加数3795人の23%、特に埼玉264人、神奈川244人増加と目立ちます)しています。2002年に比べて2003年の総検挙件人員の実に82%が、東京都と関東管区10県の増加によるものです。このことは、警察庁の「来日外国人犯罪の地方への拡散」という宣伝と異なり、2003年に警視庁と埼玉県警・神奈川県警が、「来日外国人」を集中的に取り締まった結果の「増加」であることを示しています。

6、特別法犯の検挙件数・検挙人員の検証

(1)特別法犯検挙件数
 特別法犯検挙件数は、2002年10488件から2003年13357件へ2869件増(前年比27.4%増)。全国9警察管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比1909件増加(全国の増加数2869件の67%を占める)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比773件増加(全国の増加数2869件の27%)を占めています。2002年に比べて2003年の総検挙件数の増加の実に93%が、東京都と関東管区10県の増加によるものです。

(2)特別法犯検挙人員
 特別法犯検挙人員は、2002年8522人から2003年11282人へ、2760人増(前年比32.4%増)。全国9警察管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比1927人増加(全国の増加数2760人の70%を占める)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比660人増加(全国の増加数2760人増の24%)を占めています。2002年に比べて2003年の総検挙人員の増加の実に94%が、東京都と関東管区10県の増加によるものです。

(3)特別法犯検挙件数と検挙人員増加の意味
 「来日外国人」特別法犯検挙件数・検挙人員とも、その約8割を入管難民認定法違反が占めていますので、その増加の大半は、入管難民認定法違反容疑での警察の摘発件数と摘発人員の増加によってもたらされています。2003年12月に政府は、「不法滞在者を25万人と推計し、5年間で半減する」ことを政策目標として掲げました。法務省の推計では、2003年1月現在、「不法残留者」(正規の在留資格で入国し、在留期限を超過して在留している者)は約22万人ですから、政府の推計する「不法滞在者」25万人(「不法残留者」「不法入国者」「不法上陸者」を含む)の約9割(88%)が「不法残留者」が占めていることになります。ところが、「不法残留者」は1993年の約30万人を過去の最高値として以後減少し続けており、1993年から2003年までの10年間で約8万人(−27%)減少しています。つまり、違反者の実体をあらわす入管法違反者は、最近10年間で約3割減少しているにもかかわらず、警察庁の入管難民認定法違反の検挙件数は、1993年4393件から2002年7990件へ3597件増 (82%増)、検挙人員は、1993年3618人から2002年6740人へ3122人増(86%増)と8割以上増加しています。「来日外国人」特別法犯から入管難民認定法違反者を除く検挙件数でみると1993年2507件から2002年2498件、検挙人員でみると、1993年1573人から2002年1782人、最近10年間ではおおむね横ばいで、特に増加しているわけではありません。このように違反者は減少しているのに、検挙件数と検挙人員が増大しているのは、警察の取り締まり強化の結果にすぎず、特別法犯の検挙件数と検挙人員の増加は、「来日外国人」特別法犯の発生数の「増加」を意味するものではありません

表1 最近13年間(1991年―2003年)の推定「不法残留者」数の推移
   (法務省入国管理局統計)
 年
推定 「不法残留者数」(人)
1991
159828
1992
278892
1993
298646
1994
293800
1995
286704
1996
284500
1997
282986
1998
276810
1999
271048
2000
251697
2001
232121
2002
224067
2003
220552
  赤字 最大値    青字 最小値

表2 最近10年間(1993−2002年)の「来日外国人」特別法犯検挙件数、入管法違反検挙件数、入管法違反を除く検挙件数
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
@
6900
8253
7161
7901
10363
10090
9263
8024
9564
10488
A
4393
5916
4913
5678
7968
7491
7057
5862
6958
7990
B
2507
2337
2248
2223
2395
2599
2206
2162
2606
2498
  赤字 最大値    青字 最小値
  @「来日外国人」特別法犯検挙人員、A入管法違反検挙件人員、 B(@−A)入管法以外の特別法犯検挙人員

表3 最近10年間(1993−2002年)「来日外国人」特別法犯検挙人員、入管法違反検挙人員、入管法違反を除く特別法犯検挙人員
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
@
5191
6587
5449
5923
8448
8036
7437
6382
7492
8522
A
3618
4886
3837
4492
6835
6377
5915
4918
5808
6740
B
1573
1701
1612
1431
1613
1659
1522
1464
1684
1782
  赤字 最大値    青字 最小値
  @「来日外国人」特別法犯検挙人員、A入管法違反検挙件人員、 B(@−A)入管法以外の特別法犯検挙人員

(4)以上から、2003年「来日外国人」特別法犯の検挙件数や検挙人員の「大幅増加」は警察、そのなかでも特に警視庁と関東管区の警察の入管難民認定法違反容疑の集中的な取締まりの強化によってもたらされているに過ぎず、「来日外国人」の特別法犯違反者の「増加」を示すものではありません

7、刑法犯の検挙件数の検証

(1) 刑法犯検挙件数は、2002年24258件から2003年27258件へ3000件増(前年比12.4%増)。全国9警察管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比1088件増加(全国の増加数3000件の36%を占める)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比1693件増加(全国の増加数3000件の56% 神奈川542件、群馬331件、長野303件が目立ちます)、を占めています。2002年に比べて2003年の刑法犯検挙件数の実に93%が、東京都と関東管区10県の増加によるものです。

表4  「来日外国人」刑法犯発生地域別検挙件数の推移(1993−2003年)
北海道
東北
警視庁
関東
中部
近畿
中国
四国
九州
1993
44
142
4750
3890
1781
1539
219
74
332
1994
54
344
4422
4380
1898
1377
261
100
485
1995
69
464
4997
5915
2644
1911
301
299
613
1996
74
598
4626
7094
2286
3897
510
86
342
1997
82
428
6269
9869
2147
1802
365
113
595
1998
102
624
4624
10020
3473
1661
312
249
624
1999
209
778
4407
9501
5853
2510
640
633
604
2000
145
430
4656
7050
3908
2659
1472
996
1631
2001
213
587
3932
5928
3540
2119
435
478
967
2002
166
166
517
520
4025
4944
5793
5040
10265
10226
2377
2015
461
619
151
278
503
450
2003
176
832
6032
6733
9202
2161
969
467
686
  赤字 最大値    青字 最小値
  斜体 『犯罪統計資料(平成15年1月から12月分)』のデータより

(2) 警視庁(東京都)の2003年の前年比の検挙件数の増加数は1088件、検挙人員の増加数315人、関東管区の2003年の前年比の検挙件数の増加数は1693件、検挙人員の増加数202人と、「来日外国人」刑法犯検挙件数と検挙人員の増加数に大きな差があるのは、検挙件数のなかに多くの「余罪」があるためです。窃盗犯、特にそのなかでも非侵入盗(部品盗、車上狙い、自販機荒しなど)の余罪をどの程度追及し、検挙件数に含めるかという警察の捜査方針により、刑法犯検挙件数は、増加させることも、減少させることもできます。 特に「来日外国人」に対しては、1グループ(複数犯)の余罪が何百件、何千件と検挙件数に含まれています。

(3) 過去10年間(1993年から2002年)の「来日外国人」刑法犯検挙件数から窃盗犯検挙件数を除いた件数は、1993年3637件から2002年3654件とおおむね横ばいで増加していません。2003年の日本全体の「部品盗」認知件数120726件に対して、検挙件数8515件、検挙率7%、「車上狙い」認知件数414819件に対して、検挙件数60479件、検挙率15%、「自販機荒し」認知件数147878件に対して、検挙件数28152件、検挙率19%。これら検挙率が20%以下と低い「罪種」では、警察に被害届けがなされず認知件数に含まれない、いわゆる「暗数」も多く、「検挙件数」の増減は、警察の取り締りの結果を示すものに過ぎず、その犯罪数の客観的な増減を意味するものではありません

表5 最近10年間(1993−2002年)「来日外国人」刑法犯検挙件数、窃盗検挙件数、窃盗犯以外の刑法犯検挙件数
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
@
12771
13321
17213
19513
21670
21689
25135
22947
18199
24258
A
9134
10120
14145
15952
19128
19078
22404
19952
14823
20604
B
3637
3201
3068
3561
2542
2611
2731
2995
3376
3654
  赤字 最大値    青字 最小値

(4) 「来日外国人」 刑法犯検挙件数の「増加」は、主に窃盗犯それも非侵入窃盗(部品盗、車上狙い、自動販売機荒しなど)の余罪の追及によってもたらされており、日本人ならカウントされないであろう1グループ(二人以上の複数犯)に対する何百件、何千件という余罪のカウントが「来日外国人」犯罪では行われており、「刑法犯検挙件数」の増加は指標として、犯罪が増加した根拠としてみなせないものです。

8、刑法犯検挙人員の検証

(1) 刑法犯検挙人員の増加
 刑法犯検挙人員は、2002年7690人から2003年8725人へ、1035人増(前年比13.5%増)。全国9警察管区別で見ると、警視庁(東京都)が、前年比315人増(全国の増加数1035人の30%を占める)、中部管区(富山・石川・福井・岐阜・愛知・三重の6県)が、前年比243人増(全国の増加数1035人増の24%)、関東管区(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の10県)が、前年比202人増(全国の増加数1035人増の20%)を占めています。2002年に比べて2003年の刑法犯検挙人員の実に73%が、東京都と中部管区6県と関東管区10県の増加によるものです。

(2) 日本全体の刑法犯検挙人員の増加
 刑法犯検挙人員は、2002年347558人から2003年379602人へと32044人増(前年比9.2%増)と日本全体も増加しており、2003年の「来日外国人」8725人の日本全体に占める構成比は2.3%と前年の2002年の「来日外国人」7691人の日本全体に占める構成比は2.2%より0.1%弱増加しただけで、過去のピーク時であった1993年の7276人の日本全体297725人に占める構成比2.4%より低いので、「来日外国人」犯罪だけが、とくに増加しているわけではありません。

表6 最近11年間(1993−2003年)「来日外国人」刑法犯検挙人員と全国刑法犯検挙人員及び構成比
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
@
7276
6986
6527
6026
5435
5382
5963
6329
7168
7691
8725
A
297725
307965
293252
295584
313573
324263
315355
309649
325292
347880
379602
B
2.4
2.3
2.2
2.0
1.6
1.7
1.9
2.0
2.2
2.2
2.3
  @、来日外国人』刑法犯検挙人員  A.全国の刑法犯検挙人員  B、構成比(@÷A)(%)
  赤字 最大値    青字 最小値 (出典 「2003年版犯罪白書」より作成)

表7 最近10年間(1993−2002年)「来日外国人」刑法犯検挙人員、窃盗検挙人員、窃盗犯以外の刑法犯検挙人員
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
@
7276
6989
6527
6026
5435
5382
5963
6329
7168
7690
A
3995
3937
3900
3399
3155
3098
3404
3803
4135
4395
B
3281
3052
2627
2627
2280
2284
2559
2526
3033
3295
  赤字 最大値    青字 最小値
  @「来日外国人」刑法犯検挙人員、A窃盗検挙人員、 B窃盗犯以外の刑法犯検挙人員

9、結び

 2002年と比べて2003年の『来日外国人』総検挙件数・総検挙人員の『増加』は、一見すると前年と比べて大幅増加しているように見えます。しかし、その内容を検証してみると、@特別法犯検挙件数と特別法犯検挙人員の「増加」は、警察、特に警視庁や関東管区の警察が『来日外国人』の入管法違反者の摘発を強化した結果生じたものであり、実際の入管法違反者は1993年より減少し続けていますから、実際の特別法犯の増加をあらわしているものではりません。A刑法犯検挙件数の「増加」は、『来日外国人』窃盗犯、それも暗数が多く、検挙率も低い非侵入盗の余罪追求を厳しくしている結果として『増加』しているもので、実際の犯罪の『増加』を表しているわけではありません。B刑法犯の検挙人員の「増加」は、日本全体の刑法犯検挙人員の「増加」に対応して「増加」しているだけで、『来日外国人』による犯罪だけ特に『増加』しているわけではありません。


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