在住外国人の自助組織について、

 2011年5月30日  中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 

以下の報告は、2011514日(土曜日)に、福岡市中央区大名町の 大名町カトリック教会4階会議室で、

開催された、第13回移住労働者と共に生きるネットワーク・九州の総会兼第6回「語らんね、

しゃべらんね 在住外国人の集い」の報告です。

 

移住労働者と共に生きるネットワーク九州第13回総会を兼ねた第6回 「語らんね、しゃべらんね」の集いは、

2011年5月14日(土曜日)午後1時30分から、福岡市中央区の大名カトリック教会、

4階会議室で開かれ、宮崎、熊本、北九州、福岡などから。約60名(約半数以上が在住外国人)が参加しました。

総合司会、岩本光弘共同代表の開会宣言、同じく共同代表であるコース・マルセル神父による開会あいさつ、

そして、第一部の在住外国人によるスピーチ(約一人あたり10分程度)には5人の九州内在住外国人が

、自らの体験等を報告しました。

1番目に報告したフイリピン人会熊本の代表のフイリピン女性は、熊本に住むフイリピン人の問題に取り組むという

目的を掲げた会の結成から2年半余りの活動の歩みと具体的二つの救援事例、そして会の運営を維持していくことで

の悩みについて話しました。 

2番目は、日本に在住してから15年以上のペルー人女性は、留学、通訳や翻訳の仕事、就職という経験のなかで、

外国人であるという壁にいつも直面して悩んできたことについて話をしてくれました。

3番目は、北九州で昨年結成されたフイリピン人会のリーダーのフイリピン人男性は、日本に在住しているフイリピン人が

 

直面する3つの大きな課題として、@在留資格のないフイリピン人が無権利状態となっていること、A 研修生―技能実習生が

、最低賃金以下の残業代で、長時間労働にさらされていることや賃金の未払い、労働災害にあっても泣き寝入りさせられていること、

B 結婚移住してきたフイリピン女性が、日本人夫のDVや経済的放棄、在留資格を更新してもらう身元保証人の問題で

苦しめられていること、これらは研究の結果わかったことではなく、フイリピン人自身の経験によって明らかになったことであると述べた。

4番目に大分県別府市から参加した、今年結成された大分ビサヤを支援する会―在日フイリピン人連合の代表の

フイリピン女性が、フイリピン南部のビサヤ地方出身による会の結成と、ビサヤ地方の貧困・差別・不公正などの問題を日本でしらせ、

在住フイリピン人にビサヤ地方の問題解決への支援や援助をしていくという会の趣旨と活動が報告がなされた。

最後の五番目に、関東地方から熊本に、子ども二人とともに熊本に移住してきたフイリピン女性から、

 

3月11日の地震に職場で働いているときに直面し、生きている心地がしなかったこと、その後の毎日のような余震や、

福島原発事故による放射能汚染の恐怖から九州の熊本の友人を頼って移住することにし、様々な転居手続、

子どもの学校の転校手続き、アパートや就職先をみつけてようやく落ち着くことができた体験が報告されました。 

 

15分間の休憩をはさんで、第2部は、@在住外国人の自助組織の問題について、A 労働・生活、教育、子ども。

離婚やDV問題などの2つの分科会に分かれて議論しました。

分科会のうち、在住外国人の自助組織をテーマとした第一分科会の報告です。

 

 第一分科会  自助組織について

 

第一分科会の在住外国人の自助組織の問題がテーマでした。参加者は、18名で、北九州、

福岡、熊本、大分からの12名のフイリピン、ペルー、中国などの外国籍の方、北九州、

福岡、熊本、宮崎からの6名が日本籍でした。

また、最初に、フイリピン人会・熊本のフイリピン女性から、2年半前に会の結成した目的として、

「熊本に住むフイリピン人の抱える問題の解決のために助けあう、また、在住外国人の相談を受け、

その問題解決へ向けて活動しているコムスタカー外国人と共に生きる会に協力する。」などのために

結成されたこと。最初は、15名ほどから、半年後に50名となり、現在150名ほどの会員がいる。

これまで、12月のクリスマス会、5月のサンタクルサンの祭りなどのイベントもしているが、

熊本で死亡したフイリピン人のために、フィリピンの遺族やフイリピン領事館へ連絡したり、

葬式、火葬、その他の手続を担ったり、2010年4月に熊本で、大阪のフィリピン領事館員にきてもらい、

臨時のパスポートの更新手続きを行い約300名ほどのフイリピン人が参加した。また、

DVで日本人夫の家から子どもを連れて逃げてきた2組のフィリピン人母子の相談に乗り、

公的シェルターへ保護して、その後の生活自立へ向けた支援している。悩みは、パスポート更新

手続きをした昨年は、会費を支払う会員が150名以上いたが、今年は、半分ほどに減っていること、

また、助ける活動の担い手になる人が少なく、「楽しいことは好むが、準備したり、後片付けしたり、

きついことは嫌がる人が多いこと、内部の人間関係での誹謗中傷や批判など疲れることも多いこと」等、

率直な悩みも話された、

 

北九州のフイリピン人会のフイリピン女性は、「昨年結成され、地域のフイリピン人を助けることを

目的に結成された。現在150名ほどの会員がいるが、昨年12月のクリスマス会、今年4月の花見

(北九州市内の公園で、盛り上がりすぎて、警察官が注意しに来た。)などのイベントではよく人が集まる。

困っているフイリピン人を助ける活動では、ビザの問題や、夫からのDV等の相談を受けたが、

具体的な会として取組みまで至っていない。助けることができる会となるために、

どのように運営していったらいいのかを勉強するために、今日、参加した。」との報告があった。

 

大分県別府のビサヤを支援するフイリピン人連合の代表は、「 大分県別府には、フイリピンの南部地方である

ビサヤ地域の出身者が多く、フイリピン国内でも少数者の問題であるビサヤ地方の抱える問題を日本国内でアピールして、

ビサヤ地方の問題を解決するための支援を日本から行うために今年、結成された。まだ、結成されて間がないので、

活動の実績はあまりない。この集まりがあることを知り、他の地域のフイリピン人の団体の人々と交流したいと

思い参加した。」との発言があった。

 

それ以外にも、大阪や名古屋に暮らしたことのあるペルー人女性からは、「ペルー人の場合、

カトリック教会での集まりを通じて団体が結成されていた、出身国であるペルーのために災害時などで

支援していく活動が行われていたこと、しかし、今住んでいる地域にはペルー人はほとんどおらず、

誰も頼るものがなくて孤立して暮らしているペルー人が多い」という発言がありました。

福岡市在住の中国人女性からは、 「中国人の場合、家族・親族のネットワークや、中国での

出身地域でのネットワークが作られていることが多いが、日本社会での問題は、どこも助けて

くれるところがなく、私は、日本のNGOに助けてもらって、問題を解決した」という報告等がありました。

 

報告や議論のなかで、在住外国人の類型として、@ どこともアクセスできず孤立している場合、 A 同国人の

友人とだけ付き合う場合、B 来日している家族や親族の関係者、あるいは出身地域の同胞のコミニテイや団体がある。

B その地域に 同じ国籍者でのコミニテイや組織があるが、クリスマス会や花見などイベント中心か、出身国で災害が

起きた時などに救援のための資金や物資を送るなど支援活動をする。C 日本に住む外国人が、その地域の中で困っている

同国人の問題に取り組む団体をつくる (自助組織)という違いあることがわかりました。Cの自助組織に至って結成目的を

うたっていても、具体的な行動やその担い手をどう維持していくか課題は山積しています。

 

それでも、定住化の進展と在住外国人の量的増大により、日本人のNGOやNPOに頼るだけでなく、

日本の地域社会にすむ在住外国人が自らの問題、自らのコミニテイの問題として意識し、取り組んでいく志向や

組織化の芽が芽生えてきていることが感じられる分科会でした。