熊本県上益城郡御船町の紡績工場で働いていた中国人女性技能実習生3名の訴訟は、

勝利的和解成立により、解決しました。

2010年9月 15日

 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 

はじめに

2009年1月13日コムスタカー外国人と共に生きる会で、助けを求めきて 熊本県

上益城郡御船町の紡績工場で働いていた中国人女性技能実習生中国技能実習生6名を保護しました

そして、同年3月5日に、3名が、龍田紡績株式会社(本社 兵庫県)を被告として、寮費の不当利得返還や

旅券や銀行通帳の強制管理、最低賃金法違反など不法行為による慰謝料など一人当たり約172万円の支払いを

求めて提訴しました。この訴訟は、2010年8月23日に全ての審理を終えました。

 

本件訴訟の特色

 本件訴訟は、企業単独型受け入れ方式(それも、原告らと全く関係ない中国青島の被告合弁会社の正社員を

として入管へ偽装書類を提出しておこなわれていた)で受入れられてきた技能実習生による全国唯一の訴訟です。

単独受け入れ型に関与が許されない日本側の仲介会社が介在し、また、中国側の派遣会社の関与が許されないにも関わらず、

その募集に応じて派遣されていました。その結果、原告ら3名は2009年3月18日の中国への帰国後、派遣会社から執拗な

日本での訴訟の取り下げを迫られ、応じないと「弁護士(白道)による中国での契約違反訴訟をおこす」とか、

「暴力団(黒道)を使って、命は保証しない」など脅迫を受け続けることになります。この訴訟は、消費者ローン問題にたとえると、

団体監視型受け入れの他の訴訟が、合法的な消費者ローン会社との争いに対して、非合法の「闇金」との闘いでもありました。

帰国後一時は、原告ら3名は「裁判を取り下げたい」と動揺したこともありましたが、駐福岡中国総領事館の領事の協力を得て

、何とか持ちこたえることができました。
 本件では、1年目の研修生の残業代(時給350円)の未払い問題は、労基法の2年間の時効の問題もあり、請求しておらず、

1年目の研修生のときの「労働者性」は争点になりませんでしたし、2年目以降の未払い賃金等の問題は、2009年2月16日被告に

労基署が是正勧告を発し、同年2月27日に一人当たり約80万円が3人に支払われて解決しており、賃金未払い問題は争点となっていません。

本件訴訟では、寮費(一人当たり1ヶ月3万5000円を11か月分控除された)不当利得返還と、解決まで2ヶ月以上滞在を強いられたこ

とや帰国旅費、そして旅券や通帳の強制管理、最低賃金法など違反する雇用環境で働かされていた不法行為による慰謝料の支払いを

請求する訴訟でした。

勝利的和解で解決へ
2010年8月13日の 証拠調べ終了後、長谷川浩二裁判長(熊本地裁民事第5部)が「被告に違法な行為があったことはあきらかなので、

 (被告の原告への)解決金の支払いによる和解で解決したいので、協議に応じられる意思はありますか」との和解のすすめに、

被告側が応じると回答したため、結審後の和解協議が同日行われました、そして、2回目の和解協議が、9月14日午後4時30分からに

熊本地裁で開かれました。
 原告側は、「@被告が研修技能実習生制度に関する法令や指針(ガイドライン)に違反したことを認め、原告に謝罪すること

A解決金 一人当たり80万円を支払う、B和解条項に守秘義務条項を設けない」等を提案する方針で臨んでいました。

敗訴判決を受けるか、原告の要求を受け入れるかの選択を迫られていた被告は、これまでの一切原告の主張を否定する主張

を繰り返してきた姿勢から一転して、「原告の要求した解決金一人当たり80万円を3人とも支払う」という回答してきたため、

争点は、「被告が原告に法令違反をしたことを認める」条項を入れるかに絞られました。
 この日で和解の成立を図りたい裁判官が調整し、「被告が、原告に対して、研修生−技能実習生制度に反する運用を行っていたことを認める」

という趣旨の文言を入れることを被告が認めたため、原告もこれを受け入れ、9月14日で和解成立となりました。

 

和解条項

「1、被告は、原告らに対し、被告における原告らの取扱いにおいて外国人研修技能実習生度に違反する部分があったことを認める。

2、被告は、原告らに対し、本件和解金としてそれぞれ80万の支払い義務があることを認める。(以下、弁護士口座や、

清算条項、のため略)」と明記されました。


 本件訴訟は、被告が研修技能実習生制度に違反した運営をおこなってきたことを認め、一人当たり80万円を支払うことで解決となりました。

2009年1月にコムスタカが保護してから1年8ヶ月間、2009年3月の提訴から約1年半かかりましたが、原告ら3名の勝利的和解で、

解決に至りました。これまで,この訴訟にご支援いただいた方々にお礼を申し上げます。

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