コムスタカ―外国人と共に生きる会

入管政策について


大村入国管理センターの視察と中国人Aさんの仮放免の要請
2002年8月29日 中島 真一郎

1、 はじめに

2002年11月に、中国残留孤児の再婚した妻の子の2家族7人が、残留孤児の「実子」を装い入国したとして摘発され、福岡地裁で行政訴訟が係争中で、母子6人は仮放免が認められていますが、男性であるAさんだけは仮放免が認められず、10ヶ月以上長期の収容が大村入国管理センターで行われています。
8月27日午後1時から、北川議員(社民党 兵庫8区 衆議院議員)と秘書の方の視察に同行して、大村入国管理センター所長と会えることになりました。中国残留孤児の妻とAさんの妻と子ども2人、Aさんの義理姉の家族から5人、そして私と弁護士と支援団体の熊本の会から4名の計11名が参加することになりました。

2、入管側の弁護士と入管法違反の家族の同席拒否回答

ところが、前日夕方になって法務省より、訴訟代理人となっている弁護士、入管法違反者の家族4人は、施設の視察と所長と会うところには同席できないといってきました。北川議員の秘書の方や議員らからも抗議と折衝していただき、参加者名簿を提出したメンバーは熊本から車2台に分乗して約2時間半かけて大村へいき、8月27日当日大村入国管理センターで、再度交渉することになりました。8月27日午後11時半に長崎空港(大村市にある)で北村議員と秘書の方を迎えて午後1時前まで打ち合わせをしました。午後1時に大村入国管理センターへいき、2階会議室へ案内されました。そこで、総務課長より、「本省から連絡しているように、訴訟代理人の弁護士と入管法違反者の方は所長との意見交換会の場と施設見学に参加できませんので、別室で待機してください。」といってきました。それについて30分ほど抗議したり、少なくとも通訳として子どもだけでも同席できるように折衝しましたが、結局入管側で中国語の通訳を用意することとなり、弁護士と家族4名は別室で待機し、Aさんと面会することになりました。

3、大村入国管理センター所長らとの意見交換会

大村入国管理センター2回の会議室で、入管側から五十嵐所長、次長、企画管理処遇部門の警備官と処遇部門の警備、総務課、中国語の通訳の参加があり、残った私たち8名(北川議員と秘書の方を含む)との「意見交換会」(入管側の呼び方)を午後1時半過ぎから3時前まで行いました。はじめに、五十嵐所長から、「あらかじめ申し上げておきますが、今日は意見交換会であり、個別のケースについては返答しない事を申し上げておきます」という前置きがなされた後、「入国者収容所 大村入国管理センター業務概況報告(2002年8月)」に基づき施設の概要の報告が、なされました。(以下の()は、質疑や補足説明として明らかになったこと)

1. 沿革 1950年10月1日発足、幾多の機構や組織名称の変遷をへて、1996年8月より、外壁のない現在の新庁舎が作られ、現在にいたったこと。

2.組織・人員  所長、次長の下に総務課、経理課、企画管理・執行部門、処遇部門と診療室の2課2部門1室、職員数112名、内訳は事務官など11名、医療職4人(内科医師1名、看護士2名、薬剤師1名)入国警備官97名。なお、医療職には、毎週火曜日と金曜日に歯科医師が非常勤として、昨年7月から隔週の木曜日の午後、心理カウンセラー(臨床心理士、教育学博士の資格を持つ)が非常勤として通っている。

3.施設は敷地面積53110平方メートル、鉄筋4階建て、収容定員800名

4.業務内容 「当センターは、出入国管理及び難民認定法の規定により退去強制される者を一時収容する施設である」

(1) 収容状況 平均収容者数は2000年120人、2001年184人、2000年に比べて2001年が増加したのは、中国人集団「密航」者63名が送還までに時間がかかり1月から8月まで収容されていたため。少ない時は50名、1997年で最大700名ほど収容したことがあった。 現時点で112名、集団「密航」の中国人が大半、一部ベトナム人。子ども(18歳以下))は一人も収容されていない。

資料1  入出所人員

 1997年1998年1999年2002年 2001年
入所人員18941336175613011815
出所人員16471304196314361698
収容延人員 139280 144049 137276 43634 67189
年平均収容者数382 395376120184

資料2 国籍別入所者数

 年中国べトナム その他総数
19901227 4 41235
1991112 88 1201
1992326 63 0589
1993311 4100721
1994403 3870790
1995637 81 229947
1996639 22 81742
19971835 2 571894
19981315 1 501366
19991699 3541756
20001242 0591301
20011454 13601815

注  中国には台湾、香港を含まない

(2)被収容者の処遇
『被収容者には、収容所の保安上の支障がない範囲内において、できる限り自由を与えるとともに、被収容者が属する国の風俗,習慣、生活様式を尊重した処遇に努めている』

ア、給養(給食と栄養)
「被収容者が属する国の食習慣や嗜好に配慮し、栄養バランスのとれた給食を行っている。」(食事は1日2200カロリー以上、3600カロリー以下 食費1日1200円)

イ、診療
「診療室及び病室を設置し,医師一人、看護士2人、薬剤師一人が診察に当たっているほか、必要に応じて市立病院等に通院・入院させるなど被収容者の健康管理には万全の対策を講じている」(診療所の利用は昨年6700件、1日平均18件ほど カウンセリング室は昨年7月より隔週木曜日午後に開設し、開設日には平均4−5人利用している)

ウ、運動娯楽
「屋外運動場における運動(土曜日と日曜日と雨天時を除いて週5日開放、1日30分程度の運動)のほか、(4つのブロックに区分け午前9時から午後5時までブロックの範囲内では事由に行き来できる開放処遇を行っている)。各ブロックごとに娯楽室を設け卓球用具を使用させている。また、各収容室ごとにテレビ(今年8月から中国語のビデオを公費で購入して放映)を配置している。 (入浴は毎週水曜日と金曜日の2日、午後1時〜午後12時まで)、シャワー室は、運動の後など要求があったとき使用を許可している」

エ、物品の購入
被収容者からの衣類、日用品、飲食物その他の物品の自費による購入の申し出 があったときは、収容所の保安上・衛生上支障がないと認める範囲内においてこれを許可している。(タバコ、カップラーメン、インスタントラーメン、バナナなど)

(3)送還
1950年から1989年まで 韓国人の収容と集団送還
1989年以降  ア 偽装難民事件発生以降、中国人の収容、集団送還が中心
          イ スクーリング(難民性審査)の結果、難民とみとめられなかったベトナム人などの収容・送還

以下、質疑により明らかとなったこと
平均収容期間 31日、 最長収容期間2―3年 
長期収容者現在4名 6ヶ月以上〜2年
長期収容の理由   訴訟係争中、パスポートが発給されないなど受入国がない、難民申請中などによる 自殺未遂事件(入管用語で自損行為)は、今年何件あった。 (中国人の集団「密航」事件の被収容者の送還の目処がなかなか決まらず収容が今年1月から8月まで継続したことなどが背景にある)

被収容者の仮放免決定の例 
 センター所長の職権による職権による職権仮放免は2001年1件ある。 仮放免の理由は、『結核』に感染していることがあきらかになったため。

仮放免決定の基準
 被収容者の健康状態、社会的状況、資産状況、素行など総合的に判断して決定

訴訟継続などによる長期収容者で、仮放免が認められた例
 大村の入国管理センターでは知らないが、他の入国管理センターで仮放免が認められたケースがあることはしっている。(大阪府茨木市の入国管理センターでのペルー人男性の仮放免決定など 収容期間2年)

最後に、Aさんの収容が約10ヶ月と長期となっていること、及び家族の状況や家族が 仮放免を願う気持ちを、Aさんの義母が中国語で訴え、支援者からも、子ども達が父親 であるAさんの仮放免を切実に願っていることを涙ながらに訴えました。五十嵐所長以 下入管職員は、「事情はお伺いしたが、個別のケースついての回答はできない」という立 場を述べるだけでした。

(意見交換の終了後の施設見学)

北川議員と秘書の方2名は、3―4回の被収容者の階も見学する別コースとなり、私達 6名は、1―2回の施設を入管職員の案内で見学しました。

1、面会室(1−5号室は一般面会室、6−8号室は領事や弁護士用面会室で、書類交 換ができるスリットがあけられている)
2、企画管理部門事務室
3、処遇部門事務室
4、診療室、レントゲン室、処置室、カウンセリングルーム、 母子室(ベビーベッドが3つある)、学習室(母子室や学習室やインドシナ難民でないとされた母子の収容者がいることを想定して設けられたが、開設(1996年)以降実際に母子を収容していないので、被収容者の談話室や行事や祭りの企画室としてりようしている)、違反調査・審査室、所持品検査室、廊下の窓から運動場などを見学しました。 被収容者は、12畳の畳の部屋に多いときは10人、少ない時で3―4人で収容されています。日課表によると、起床 7時、朝食7時30分、昼食11時30分、夕食16時30分,  消灯22時と書かれていました。

長期収容問題の解決を
「自損行為」とよばれる被収容者の自殺未遂事件が大村入国管理センターでもおきている事が明らかになりました。入管収容センターでの収容は、行政処分に過ぎないにもかかわらず、刑法でも原則として認めていない「不定期刑」を課しているかのような重大な人権侵害がまかり通り、収容期間の目処もはっきりしないまま、長期収容を強いられていることが大きな背景となっています。現在、条約難民については、見なし作業が進められていると報道されていますが、入管収容センターで、長期収容を強いられる難民申請者だけでなく裁判継続者、受入国が不明者についても、例えば最大2ヶ月を超えても退去強制できない場合には、長期収容をせず、仮放免を認め在宅でその決定を待機できる運用に変えるべきだと、思います。


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