入管法違反で逮捕後に婚姻届を提出したビルマ人夫の退去強制令書発付処分等請求

注目される最高裁第三小法廷の判断

―――  国の上告受理理由書への批判

 

 2008年12月29日  中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 

1、控訴審(東京高裁)で外国人が勝訴し、国が最高裁に上告受理を申立てた最初のケースです。

 

逮捕後に婚姻届を提出した在留資格のないビルマ籍夫の退去強制令書発付処分等取消請求訴訟は、2007年

6月14日に東京地裁で勝訴しました。国が控訴し、控訴審の東京高等裁判所も、同年11月21日原告勝訴

の原審判決を支持し、控訴を棄却する判決を言い渡しました。これに対して、2007年12月に国は最高裁に

上告許可申請しました。国は、2008年2月15日上告受理理由書を提出し、現在、最高裁第三小法廷で審理中です。

 

事件概要や東京高裁判決の概要については、コムスタカのホームページ 出入国関連行政訴訟のなかの

オーバーステイ外国籍夫の退去強制令書発付処分取消訴訟で、東京高裁での勝訴判決のご紹介」また、

原告代理人の山下幸夫弁護士が、国際人権法学会の年報「国際人権」19号(162−163ページに、

上記東京地裁判決(2007年6月14日判決)の判例紹介を掲載していますの、それらをお読み下さい。

 

これまでは、下級審でまれに国が敗訴しても、控訴や上告せず確定させるか、下級審で和解して終結させており、

最高裁の判例としてあるものは、外国人が下級審で敗訴し最高裁へ上告、上告受理申立を行い、最高裁で民事訴訟法上

の上告事由や、上告受理事由がないとして退けられたものばかりでした。それ故、国も、このビルマ人夫の上告受理理由書

(以下、理由書)では、過去の東京地裁や東京高裁判例などを引用し、それを追認した最高裁の判例を引用しますが、

内容を判断した最高裁判例は引用していません。

 

日本人配偶者と在留資格のない外国人配偶者のケースで、上告受理が認められ、内容判断されて最高裁で棄却された判例は

これまで存在していません。退去強制令書発付処分等取消請求訴訟で、国が敗訴して最高裁へ上告受理申立をしたのは、

このビルマ人夫の東京高裁判決が最初と思われます。

 

2 国の上告受理理由書の概要

 

(1)法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣などの裁量権に関する解釈の誤り

 

 原判決は裁量権の逸脱・濫用に当たるか否かの判断にあたり、「全く事実の基礎を欠き、又社会通念上著しく妥当性を欠くことが

明らである)かどうかという判断基準を用いたが、これは在留期間更新の許否の判断について妥当するものであって、より広範な裁量権の

認められる在留特別許可の許否の判断には妥当しない。在留特別許可を付与しない法務大臣等の判断が裁量権の逸脱・

濫用として違法となるのは、在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反する場合のような極めて特別な事情が

認められる場合に限られるべきであるから、原判決の判断は、法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣などの

裁量権範囲に関する解釈を誤っている。またこの原判決の判断は、東京高等裁判所平成12年6月28日判決

( 訟務月報47巻10号3023ページ)と相反するものである。

 

注: マクリーン事件最高裁( 昭和53年10月4日)判決

  

在留期間の更新不許可処分取消請求訴訟に関する事案で、「法務大臣等の判断が裁量権の逸脱・濫用として違法となるのは、

裁量処分が全く事実の基礎を欠きまたは考慮すべき事情を考慮しなかったことなどにより判断が社会通念上、著しく妥当性制を

欠くことが明らかである場合に限られる」

 

注: 東京高裁平成12年6月28日判決

 

「在留特別許可を・・・付与するか否かは、法務大臣の自由裁量に属し、・・・その裁量権の範囲は、在留期間更新の場合

よりさらに広範であると解するのが相当である。したがって、右判断が違法とされるのは、法律上当然退去強制されるべき

外国人について、なお、我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由が認められるような場合に限られると

いうべきである。」と判示している。

 

(2) 本件において、裁量権の逸脱・濫用を認めた誤り

 

以上によれば、仮に、裁量処分が全く事実の基礎を欠きまたは考慮すべき事情を考慮しなかったことなどにより判断が社会通念上、

著しく妥当性制を欠くことが明らかであるかという判断基準によるとしても、まず本件裁決が前提とした事実には事実誤認は認められず、

「全く事実の基礎を欠く場合」とは到底いえない。また社会通念上著しく妥当性を欠くか否かについても、@「考慮すべき事情」が何かは、

入管法の立法政策によるべきところ、本件において「考慮すべき」を検討するにしても、それは在留資格を基礎づけるような事情で

なければならないところ、相手方(と日本人女性)の「真摯な共同生活」はこれに該当せず、「考慮すべき事情」ということはできないし、

A仮にこれを考慮したにしても、違法な不法滞在状態の上に築かれた婚姻関係については、在留特別許可の判断に当って、

これを重視すべきであるとは到底いえない。また、B相手方の本邦入国状況や滞在状況は悪質なもので、・・・いずれも違法性が

明白なものである。これら@ないしAからすれば、本件において、相手方(と日本人女性)の「真摯な共同生活」が認められたとしても、

在留特別許可を与えなかったことにについて、考慮すべき事情を考慮しなかったとか、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くと

評価される余地はないというべきである。したがって、本件において、在留特別許可を与えなかったことが裁量権の逸脱・濫用である

とした原判決は、法50条1項の解釈・適用を誤ったものである。

 

(3)  原判決は、同種事例における過去の判例等とも相反すること

 

@ 最高裁昭和34年11月10日第三小法廷判決(民集13巻12号 1493ページ)

 

 戦時中から引き続き本邦に在留していた者と内縁関係にあり、子どもまでもうけていた不法在留中の外国人である原告が、

在留特別許可を与えなかったのは違法である旨主張した事案

 

 

原告が敗訴した 1審判決(東京地方裁判所昭和33年4月24日判決・民集13巻12号  1495ページ)を引用した

控訴審判決(東京高等裁判所昭和33年10月8日判決・民集13巻12号  1499ページ)を維持している。

 

A 最高裁昭和54年10月23日第三小法廷判決(訟務月報26巻3号 468ページ)

 

10年前に不法入国した外国人男性、13年前に不法入国した同国女性及び本邦において出生した両名の間の子ら2名に対し、

法務大臣が在留特別許可を与えなかった事案。

 

「本邦に不法入国し、そのまま在留を継続する外国人は、・・・その在留の継続は、違法状態の継続にはかならず、

それが長期間へ平穏に継続されたからといって直ちに法的保護を受ける筋合いのものではない」と判示しており、このような判断は、

近時の裁判例においても踏襲されている。

(東京高裁平成16年3月30日判例・訟務月報51巻2号511ページ、

東京高裁平成17年4月13日判決・平成16年(行コ)第389号・ 公刊物未掲載)

 

B 最高裁判所平成19年3月20日第三小法廷決定

 ( 上告棄却及び上告として受理しない旨決定され、確定した。)

 

不法残留の外国人が、日本人女性と婚姻して在留特別許可を申請したが、法務大臣が在留特別許可を認めなかった事案

 

原告の外国人が敗訴した1審東京地方裁判所判決平成18年4月21日判決、

控訴審 東京高等裁判所平成18年10月26日判決でも控訴が棄却された。

 

 

(4)  結論

 

以上のとおり、原判決は、法務大臣の裁量権の範囲について、法50条1項の解釈の誤りがあり、さらに、

本件裁決において「真しな共同生活」を考慮すべきであるのに考慮しなかったなどとして、直ちに在留特別許可を

与えなかったことを違法とした点において、同条項の解釈適用を誤ったものというべきであり、これらは同条項の

解釈適用に関する重要な事項を含み、かつ、平成12年東京高裁判決とも相反する。

したがって、本件は、「原判決に・・・控訴裁判所である高等裁判所の判例・・・と相反する判断がある事件その他の法令の

解釈適用に関す重要な事項を含むものと認められる事件」(行政事件訴訟法第7条、 民訴法 318条1項)に当るから、

本申立を受理した上、原判決を破棄し、さらに相当な裁判を求める。

 

 

3、外国人が敗訴した判決と、外国人が勝訴した判決との違い

国が、理由書のなかで同種の事例として引用している判例は、どれも、在留特別許可を入管が認めてもおかしくない、

許可していても問題とならない事例ばかりです。

ただ、それぞれ、入管の担当者にとって、婚姻の実態について疑念( 日本人配偶者が、70歳代という年齢差の大きさ、

窃盗犯として有罪判決と婚姻の実態があったのが出頭前の1ヵ月半程度という短期間という評価、逮捕当初の帰国希望を途中

から交際中の日本人女性との婚姻を理由に在留希望に変えたことなど)があり、心証を悪くして許可しない

判断をしたと思われます。他の在留特別許可の許可事例と比べて紙一重、胸先三寸のちがいでしかありません。

 

しかし、これを裁判所で行政訴訟であらそうとなると、ことごとく裁判所は、国の判断を追認してきました。

これらの裁判所の判例は、法務大臣などの裁決(在留特別許可)の判断について、

1978年マクリーン判決の枠組みを使っており、婚姻の実態を認めそれを保護することより、

在留特別許可に法務大臣(あるいは委任された地方入国管理局長)の広範な裁量権を優先させて、

これらの事例での外国人の訴えを斥けています。

 

国が引用する外国人が敗訴した判決と、勝訴事例の中国残留孤児の婚姻前の娘2家族7人の

2005年3月7日の福岡高裁判決(敗訴の原審福岡地裁判決)、ナイジェリア人夫の

2007年2月22日の福岡高裁判決(敗訴の原審福岡地裁判決も)、2007年11月21日の

ビルマ人夫の東京高裁判決、同事件の東京地裁判決を比べてみました。

 

これらの勝訴判例も、1978年マクリーン判決の枠組みを使っており、違いは、家族としての実態や

真摯な共同生活の実態などを認め、婚姻の保護を優先させて、法務大臣の裁決の濫用と逸脱を認め、

処分を取り消しています。敗訴と勝訴のちがいは、1978年のマクリーン事件最高裁判例の枠組みと

同じものをつかっていますので、事実認定と評価の違いでしかありません

 

2006年1月ナイジェリア人夫の原審である福岡地裁判決で、敗訴になったのは、「@婚姻関係を短期間である上、

未だ同居生活を送るにいたっていないこと、A原告の在留状況を必ずしも良好と言いがたいこと B原告がナイジェリアに

帰国することが原告と日本人配偶者にとって著しい不利益であるとは言いがたい」と評価して、被告の処分は裁量権の逸脱や

濫用とならないと結論づけたためでした。

 

一方、逆転勝訴した2007年2月22日の福岡高裁の控訴審判決は、@ 婚姻期間が短く、同居していなかったとしても必ずしも

保護に値しない婚姻ということができないこと、本件については、裁決処分時に真摯な愛情に満ちたものであること、夫婦の実態が

あることを認めて保護すべきものと評価しました。 A 控訴人の在留状況は必ずしも不良とまではいえないと評価しました。

B 控訴人が退去強制されると、本人に著しい不利益を与えるものではないが、日本人妻にとって二人の婚姻関係を破綻させる

著しい不利益を与えると評価しました。 その上で、本件裁決処分は、その裁量権を逸脱し、濫用する違法な処分であることを認め、

原判決を取り消す決定をしました。

 

ナイジェリア人夫の控訴審での被控訴人(国)の第4準備書面の中で、この判決と同様に控訴人側が逆転勝訴した

2005年3月7日の福岡高裁での元中国残留孤児の妻の娘2家族7人の退去強制令書発付処分等取消請求事件で、

被控訴人が最高裁へ上告及び上告受理申立しなかった理由を、次のように述べていました。

 

「しかしながら、最高裁判所に上告することができるのは、憲法違反又は重大な手続き違反(民事訴訟法312条1項、2項)

がある場合に限られており、また、最高裁判所への上告受理申立が受理され得るのは、最高裁判所の判例と相反する判断が

ある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含む事件に限られている。(民事訴訟法318条1項)ところ、

上記福岡高裁平成17年3月7日判決については、上記各事由が認められなかったことから、被控訴人らは上告及び

上告受理申立てを行わなかっただけである。」

 

以上の国の主張から明らかなように、被控訴人が上告や上告受理申立を断念した最大の理由は、

控訴審判決の論理やその理由から、上告や上告受理申立てをおこなっても、最高裁で民事訴訟法上の上告事由や、

上告受理事由と認められず、敗訴する可能性が高いと判断したからと思われます。

 

結局、外国人が逆転勝訴した控訴審判決は、原判決引用の1978年マクリーン事件最高裁判決の論理の枠組みで

判決しており、「原判決の決定を取消したのは、あくまで事実認定に関する評価を変えただけであるため、

上告や上告受理の理由とならない」と判断されたためと思われます。

 

 

4、国が、ビルマ人夫の東京高裁敗訴判決に上告受理をした理由

 

この理由書は、控訴審での国の主張とほぼ同じでしたが、法50条1項の解釈と適用の

誤りを主張し、過去の判例(国の主張を追認した判例は、無数にあるとおもいますが、最高裁第三小法廷の判例中心)

を並べて、これに相反するとして上告受理の理由を主張しています。

理由書を読んで、このケースの東京高裁判決に対して、私がかかわった2005年3月7日の中国残留孤児家族の

福岡高裁判決や2007年2月22日のナイジェリア人夫の福岡高裁判決が一審の判断を取消す逆転勝訴で国も

上告断念しているのと比べて、なぜ国が控訴した理由が推測できます。

 国の敗訴判決が、国の「守護神」といえる東京高裁判決であること、この判決文が、

事例内容に沿った判断をしただけでなく、以下のように入管の法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣など

裁量権に関する主張を、これまで東京高裁判決や最高裁判決でも追認してくれていたのに、正面から判決文で否定する

判断をしたことに、我慢がならなかったということではないでしょうか。(このあたりの感情は、

同種の事例の過去の判例として、あてつけのように最高裁第三小法廷の過去の判例を多数引用

しているところにもあらわれています。)

 

 

注:2007年11月21日東京高裁第23民事部(安倍嘉人裁判長)判決の判断の紹介

 

@  在留特別許可についての法務大臣の裁量権について、

 

 「控訴人」(法務大臣)は,

「在留特別許可を付与しないという法務大臣等の判断が裁量権の逸脱又は濫用に当たるとして

違法とされるような事態は容易に想定しがたく,極めて例外的にその判断が違法となり得るとしても,

それは,法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない

積極的な理由があったにもかかわらずに看過されたなど,在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに

反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られるというべきである」と主張するが,

〔当裁判所〕

「入管法50条1項の規定に照らしてもそのように解さなければならない理由はない。

 

2  裁量処分に対する司法審査について、

「控訴人」(法務大臣)は,

「裁量処分に対する司法審査は,処分をした行政庁と同一の立場に立って行政庁の判断に置き換えて

結論を出すことではなく,あくまでも行政庁の裁量権の行使としてされたものであることを前提として,その

判断要素の選択や判断過程に著しく合理性を欠くところがないかどうかを審査すべきものであるところ,原判決は,

東京入国管理局長と同一の立場に立って裁量判断をしたに等しい」と主張する。

{当裁判所}

本件裁決・決定書においては,在留特別許可を付与しない理由としては『在留を特別に許可すべき事情は認められない。』と

記載されているのみであり,その実質的な理由が明らかにされていないのであるから,この裁量判断が裁量権の逸脱又は濫用に

当たるかどうかを司法審査するに当たっては,いきおい具体的な事実経過を審理し,これを踏まえて,在留特別許可を付与

しなかった判断の結論を左右するだけの重要な事実が認められるのか, また, この事実を前提とした場合には当該結論が

社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるといい得るかを検討せざるを得ず,その過程で在留特別許可に関する

積極要素と消極要素を審理検討することもまた必然であるというべきである。」

そして,現に,原判決は,上記のような審理を経て,本件裁決は被控訴人と(その妻)との「真しな共同生活」の存在を考慮に

入れないまま判断に至ったものと認定した上,このような本件裁決は,その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上

著しく妥当性を欠くことが明らかであるとしているのであって,この判断手法を論難する控訴人の主張は理由がない。」

 

 5、理由書への批判

 

ビルマ人夫の国の理由書に対する反論として、まず、国の主張は、事実認定と評価の違いにすぎず、最高裁判所への

上告受理申し立てが受理され得るのは、「最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する

重要な事項を含む事件に限られている。」ので、これに該当しないとして却下すべきである。

 

また、国は、「在留特別許可を付与しない法務大臣等の判断が裁量権の逸脱・濫用として違法となるのは、在留特別許可の

制度を設けた法の趣旨に明らかに反する場合のような極めて特別な事情が認められる場合に限られるべきであるから、」

「原判決の判断は、法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣などの裁量権範囲に関する解釈を誤っている。また,

この原判決の判断は、東京高等裁判所平成12年6月28日判決( 訟務月報47巻10号3023ページ)と相反するものである。」

と主張している。

しかし、国の引用する東京高裁平成12年6月28日判決は、「在留特別許可を・・・付与するか否かは、法務大臣の自由裁量に属し、

         ・・その裁量権の範囲は、在留期間更新の場合よりさらに広範であると解するのが相当である。したがって、右判断が違法とされるのは

         、法律上当然退去強制されるべき外国人について、なお、我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由が

         認められるような場合に限られるというべきである。」と判示しているにすぎず、

原判決がいうように、法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣などの裁量権範囲に関する解釈にあたって、国が主張する

「在留特別許可を付与しない法務大臣等の判断が裁量権の逸脱・濫用として違法となるのは、在留特別許可の制度を設けた

法の趣旨に明らかに反する場合のような極めて特別な事情が認められる場合に限られるべきであるから、」という解釈に

限定されるいわれはない。

したがって、国の上告受理理由が理由ありとみとめられた場合には、「法第50条1項の解釈や適用に関する

原判決の判断は、法50条1項の在留特別許可に係る法務大臣などの裁量権範囲に関する解釈・適用を誤っておらず、

過去の判例にも反していない。」として棄却すべきです。

さらに、国の上告受理理由が理由ありとみとめられ、法第50条1項の解釈や適用に関する原判決の判断が過去の

判例の判断と異なるとみなされた場合でも、日本国憲法や国際人権諸条約の精神にてらして、法務大臣の裁量権よりも夫婦や

家族結合の保護を優先して解釈・適用すべきであり、従来の婚姻や家族の結合の保護よりも法務大臣の裁量権を優先して

判断されてきた過去の判例の判断を見直し、原判決の判断を採用する見直しを行い、国の上告受理理由を棄却すべきであす。

 

 

6、注目される最高裁第三小法廷の判断

 

国が上告受理申立をおこなってから約1年余りが経過しました。時期は不明ですが、最高裁第三小法廷が、

今後、以下のいずれの判断をするか、注目されます。

 

@、「国の上告受理理由は、民事訴訟法上の上告受理事由に該当しないとして却下する」

A 「国の上告受理理由を認めるが、法令の解釈適用の誤りがなく、かつ過去の判例に反することは

ないとして国の上告受理申立を棄却する。」

B 「国の上告受理理由を認め、これまでの法令の解釈適用あるいは過去の判例を見直し、

原判決の解釈適用を採用して、国の上告受理申立を棄却する。」

C 「国の上告受理理由を認め、法令の解釈適用の誤りを認め、あるいは、過去の判例に相反するとして

東京高裁判決を見直す、あるいは差し戻す。」

 

 

@からBの判断がなされた場合は、外国人夫の勝訴となります。@かAの判断がなされた場合には、

従来の判例の枠組みの中で外国人の勝訴となりますが、もし、Bがなされた場合には、

従来の解釈適用が見直されることで、外国人夫の勝訴となります。

 

 

Cの場合には、外国人夫の逆転敗訴となるか、高裁での審理のやり直しとなります。

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